犬の椎間板ヘルニアとは?|後ろ足が立たない原因・症状・治療と手術の目安|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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犬の椎間板ヘルニアとは?|後ろ足が立たない原因・症状・治療と手術の目安

【東京ウエスト動物病院 東京都・小平市】

「突然、後ろ足が立たなくなった」
「腰を痛がって、歩こうとしない」
「後ろ足を引きずるようになった」

こんな症状がみられたら、椎間板ヘルニアの可能性があります。

椎間板ヘルニアは、背骨の中を通る神経が圧迫され、痛みや歩行障害、麻痺などを起こす病気です。

軽い場合は安静とお薬で改善することもありますが、重症では早急な検査や手術が必要になる場合があります。

突然歩けなくなった場合は、様子を見ずに、すぐに動物病院を受診してください。

■1.椎間板ヘルニアって、どんな病気?
犬の背骨は、いくつもの骨が連なってできています。
骨と骨の間には、クッションの役割をする「椎間板(ついかんばん)」があります。

この椎間板が変形したり、中身が飛び出したりして、背骨の中を通る「脊髄(せきずい)」という大切な神経を圧迫する病気が、椎間板ヘルニアです。

脊髄は、脳からの命令を足や体に伝える働きをしています。
そのため、脊髄が傷つくと、痛みだけでなく、足がうまく動かなくなることがあります。

■2.どんな症状が出るの?
症状は、神経が圧迫される場所や程度によって異なります。

✔ 背中や腰を痛がる
✔ 抱き上げるとキャンと鳴く
✔ 背中を丸め、動きたがらない
✔ 後ろ足がふらつく、足先を引きずる
✔ 後ろ足で立てない、歩けない
✔ 排尿がうまくできなくなる
✔ 首の椎間板ヘルニアでは、頭を動かしたがらない、首を下げたまま動かない、前足にも異常が現れるなどの症状がみられます。

首の痛みに気づくためのサインは、スタッフこらむでもご紹介しています。
・いつもと違う?それ首の痛みのサインかも?!

痛がらなくなったからといって、必ずしも改善したわけではありません。
重症になると、痛みを感じる神経の働きも失われることがあります。

■3.椎間板ヘルニアになりやすい犬種は?
特に注意したいのは、次の犬種です。

○ ミニチュア・ダックスフンド
○ フレンチ・ブルドッグ
○ ビーグル
○ ペキニーズ
○ シー・ズー

これらの犬種は、椎間板が比較的若い時期から変性しやすい特徴があります。
ただし、椎間板ヘルニアは大型犬や雑種犬にも起こります。
特にダックスフンドでは発症リスクが高く、若い犬でも注意が必要です。

■4.重症度はどうやって判断するの?
胸や腰の椎間板ヘルニアでは、神経の障害を一般的に5段階で評価します。

「深部痛覚」とは、強い刺激を脳が痛みとして感じ取れるかどうかです。
この反応は獣医師が神経学的検査で判断します。
足を引っ込める反射だけでは、深部痛覚があるとは判断できません。

グレードが重くなるほど、回復が難しくなる傾向があります。
※この分類は主に胸腰部の椎間板ヘルニアに用いられます。

■5.どうやって診断するの?
まず、歩き方や神経の反応、痛みのある場所を調べます。

主な検査は次のとおりです。
神経学的検査:足の動き、姿勢反応、深部痛覚などを確認
整形外科的検査:膝や股関節など、足そのものの病気を調べる
レントゲン検査:背骨の形や骨の異常などを確認
MRI・CT検査:椎間板や脊髄の状態を詳しく調べる

通常のレントゲン検査だけで、椎間板による脊髄の圧迫を確定することはできません。
また、後ろ足の異常は膝蓋骨脱臼(パテラ)や関節の病気、ほかの神経疾患でも起こります。

後ろ足を上げる、スキップするなどの症状については、こちらの記事もご覧ください。
・犬の膝蓋骨内方脱臼(パテラ)の初期症状とは? 足を上げる・スキップ歩行は要注意

東京ウエスト動物病院では、神経学的検査と整形外科的検査を組み合わせて原因を調べ、MRI・CT検査が必要な場合は専門施設へご紹介しています。

■6.安静で治るの?それとも手術が必要?
治療は、症状の重さと神経の状態によって選びます。

■ 保存療法(安静とお薬による治療)

自力で歩けて、神経症状が軽い場合などに検討します。
主な治療は、十分な運動制限と、必要に応じた痛み止めなどによる症状の管理です。

安静期間は一般的に少なくとも4週間程度を目安とし、その間はジャンプ、階段、激しい運動を避けます。
ただし、安静にしていても症状が悪化したり、強い痛みが続いたりする場合には、治療方針の見直しが必要です。

■手術療法
自力で歩けない、麻痺が進行している、適切な保存療法でも改善しない場合などに検討します。
手術では、飛び出した椎間板などによる脊髄の圧迫を取り除きます。
特に深部痛覚が失われている場合は重症であり、早急な専門的評価が必要です。

歩けなくなったら必ず手術、というわけではありませんが、手術が有利と考えられる症例も多くあります。

当院では、椎間板ヘルニアの手術が必要と判断された場合、対応できる専門獣医師と連携して治療を進めます。

● レーザー治療は効果があるの?
犬の椎間板ヘルニアに関連するレーザー治療には、次のような異なる方法があります。

① 皮膚の上から照射するレーザー治療(光生体調節療法:PBM)は、痛みの軽減や手術後の回復を助ける補助療法として研究されています。ただし、歩行回復などの効果については研究結果が一致しておらず、確実な効果はまだ証明されていません。

② 椎間板の内部に針を入れてレーザーで処置する「経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)」は、椎間板の内圧を下げることを目指す別の治療法です。国内でも研究されていますが、適応は限られています。

いずれも、安静・薬による治療や、必要な脊髄の減圧手術に代わるものではありません。特に急に歩けなくなった場合は、レーザー治療を優先して受診を遅らせないことが大切です。

■ 新しい治療法:間葉系幹細胞による再生医療
近年、犬の椎間板ヘルニアに対して、間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)を点滴する治療が研究されています。
これは、体の組織から採取・培養した細胞を使い、脊髄の炎症を抑え、傷ついた神経の回復を助けることを目指す治療法です。

日本では、犬の胸腰部椎間板ヘルニアを対象とした再生医療製品「ステムキュア」が2021年に条件・期限付承認を受けています。
ただし、すべての犬に効果があるわけではなく、手術や従来の治療に代わるものではありません。
治療効果や長期的な安全性については、現在も検証が進められています。

■7.椎間板ヘルニアは治るの?
回復の可能性は、神経の障害の程度によって大きく異なります。

軽症では、保存療法によって良好に回復する犬も多くみられます。
歩けなくなった犬でも、適切な治療によって再び歩けるようになることがあります。

一方、深部痛覚が失われた重症例では、回復が難しくなる場合があります。
また、まれに脊髄の障害が急速に広がる「進行性脊髄軟化症」という重い合併症が起こることもあります。

治療後も再発する可能性があるため、体重管理や生活環境への配慮が大切です。

■8.突然、後ろ足が立たなくなったら?
次のような場合は、すぐに動物病院を受診してください。

突然、後ろ足で立てなくなった
足の麻痺が急速に進んでいる
強い痛みで動けない
尿を出そうとしても出ない

受診までは無理に歩かせず、背中をできるだけ安定させて安全に移動しましょう。
自己判断でのマッサージ、ストレッチ、痛み止めの投与は避けてください。

東京ウエスト動物病院では、歩行状態、神経の働き、痛みの程度などを確認し、治療方針を検討しています。
必要に応じてMRI・CT検査や脊椎手術が可能な専門施設と連携し、その子に合った診断と治療につなげます。

参考資料
1.犬の胸腰部椎間板ヘルニアの国際的な診療指針(2022年)
Olby NJ, et al. ACVIM consensus statement on diagnosis and management of acute canine thoracolumbar intervertebral disc extrusion. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2022;36:1570–1596.
保存療法と手術療法の適応、MRI・CT、神経障害の重症度、術後管理に関する中心的な資料です。

2.歩けない犬に対する保存療法の前向き研究(2024年)
Khan S, Jeffery ND, Freeman P. Recovery of ambulation in small, nonbrachycephalic dogs after conservative management of acute thoracolumbar disk extrusion. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2024;38:2603–2611.
MRIで診断された歩行不能の小型犬72頭の研究です。深部痛覚が残っていた51頭中49頭、消失していた21頭中10頭が12週間以内に歩行を回復しました。
ただし、小型の非短頭種で手術を受けなかった犬を対象とした研究であり、すべての犬に適用できる数字ではありません。手術と保存療法を無作為比較した研究でもありません。

3.犬種による椎間板ヘルニアの特徴(2025年)
Comparison of Clinical Features of Intervertebral Disc Extrusions in English Cocker Spaniels, French Bulldogs and Dachshunds. Animals. 2025;15:602.
画像診断で確認された937例の研究で、ダックスフンドでは胸腰部、フレンチ・ブルドッグでは頚部の発症割合が相対的に高いことなどが報告されています。

4.犬猫の椎間板疾患の専門解説
Degenerative Diseases of the Spinal Column and Cord in Animals. MSD Veterinary Manual.
椎間板の変性、犬種による違い、遺伝的素因などについての獣医学専門資料です。猫では犬より椎間板疾患が少ないことも説明されています。

5.フレンチ・ブルドッグとパグの脊椎疾患の違い(2025年)
Prevalence and breed predisposition for spinal diseases in pugs and French bulldogs. Veterinary Record. 2025.
フレンチ・ブルドッグでは急性椎間板逸脱が多く、パグではほかの脊髄疾患や慢性椎間板突出が比較的多いことが報告されています。後ろ足の異常を犬種だけで椎間板ヘルニアと決めつけない根拠にもなります。

6.レーザー照射療法(PBM)の効果に関する総説(2023年)
Millis DL, Bergh A. A Systematic Literature Review of Complementary and Alternative Veterinary Medicine: Laser Therapy. Animals. 2023;13(4):667. DOI: 10.3390/ani13040667犬の椎間板ヘルニア術後に対するレーザー治療の研究結果は一致しておらず、照射条件や研究規模による限界があります。

7.犬の経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)に関する国内研究(2014年)
金井詠一ほか.犬の椎間板ヘルニアに対するPLDD.日本レーザー医学会誌.2014;35(1):33–38.DOI: 10.2530/jslsm.jslsm-35_0006
国内で行われた椎間板内へのレーザー処置の研究です。皮膚からのレーザー照射(PBM)とは異なる方法であり、適応の慎重な判断が必要です。

再生医療に関する参考資料
① 農林水産省・動物用医薬品等データベース
「ステムキュア」製品情報。承認日、効能・効果、投与方法、禁忌、使用上の注意あり。

② 上田忠佳(2022年)
「世界初の犬を対象とした動物用再生医療等製品『ステムキュア』について」
バイオテクノロジスト/バイオ技術最前線。臨床成績19例、安全性、作用機序、製品開発の経緯を詳しく紹介した資料です。

③ 武田妙(東京大学、2022年公開)
「骨髄由来間葉系幹細胞の静脈投与による犬の亜急性期脊髄損傷に対する脊髄再生医療の開発」
博士論文。マウス脊髄損傷モデルでの機能回復や、犬での細胞投与・移行性などを調べた基礎研究です。犬の椎間板ヘルニア患者での治療効果を直接証明した臨床試験ではありません。

④ 北川一星ほか(2025年)
「椎間板ヘルニアに対して間葉系幹細胞治療を実施した犬15頭」
中国地区の獣医学会における症例報告。書誌情報は確認できましたが、詳細な治療成績や投与経路は公開情報から十分確認できないため、効果を数値で紹介することは控えます。

⑤ 平野由夫(2026年)
「1次診療施設における犬胸腰部椎間板ヘルニア(IVDH)軽度症例の再発リスクに関する疫学的検討および犬(同種)脂肪組織由来間葉系幹細胞製品を用いた再発抑制効果の探索的研究」
MVM, 35(4):105–108, 2026年5月。
軽症例における再発予防という新しい研究テーマです。ただし、再発抑制効果が確立したと判断できるだけの詳細データは確認できませんでした。

Web問診はこちら – 東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661  FAX: 042-349-7662
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