いぬ
咳
咳につながる疾患には、気管軟化症(気管虚脱)、短頭種気道症候群、軟口蓋過長症、喉頭麻痺、喉頭室外反、喉頭虚脱、ケネルコフ(犬伝染性気管・気管支炎)、猫喘息などがあります。その他にも、肺水腫、左心房拡大による気管(支)挙上、心不整脈(期外収縮)、肥満などが上げられます。
咳 - 気管軟化症(気管虚脱)
それらの中で比較的多く見られるものに気管軟化症(気管虚脱)がありますが、これは高齢の犬に多く、咳はだんだんひどく、時間も長くなり、進行に連れて止まりにくくなっていきます。犬はとても辛そうで、体力を消耗します。見ていて何とかしてあげたいと思うほどです。
空咳、喘鳴音、咳の最後にカ~ッと痰を出すようなしぐさのほか、ガチョウが鳴くような『ガ~』、『ガ~』とひどい音として聞こえることも多いです。くしゃみ様になることもあります。進行性のことが多く、増悪と共に気管だけでなく、肺にも悪影響を及ぼします。
肺炎様のより強い呼吸困難を引き起こすこともあります。
咳込み時にオシッコが出てしまうこともあります。
咳 - 気管軟化症(気管虚脱)
犬の心臓腫瘍
カナダのアトランティック獣医科大学(Atlantic Veterinary College, AVC)は、犬の心臓腫瘍に関する研究や治療で知られています。心臓腫瘍は犬にとって深刻な病気で、特に血管肉腫や大動脈小体腫瘍が多く見られます。従来、期外収縮や頻脈性愚生脈の治療に用いられている薬、プロプラノロールを使用して犬の心臓腫瘍を治療する臨床試験を行っています。
従来の心臓腫瘍の治療法は、外科的切除や抗がん剤投与が一般的でした。上記のAVCでは、最新の診断技術と治療法を用いて、犬の心臓腫瘍に対する包括的なケアを提供しています。心臓腫瘍は、犬では比較的稀ですが、発見されると深刻な問題となることが多いです。
もし愛犬が心臓腫瘍の疑いがある場合、早期診断と治療が重要です。定期的な健康診断を受けることをお勧めします。
健康診断のタイミング
愛犬の健康診断は、年齢や健康状態に応じて適切なタイミングで受けることが重要です。以下のガイドラインを参考にしてください。
- 子犬の時期:生後6~8週目に初回の健康診断を受け、その後1か月ごとに2回目、3回目の健康診断を受けるのが理想的です。
- 成犬(5~6歳まで):基本的に健康な犬の場合、年に1回の健康診断が推奨されます。
- シニア犬(7歳以上):年齢が上がると病気のリスクも増えるため、半年に1回の健康診断が理想的です。
愛犬の健康を守るために、定期的な健康診断を欠かさず行うことは大切で、心臓腫瘍は早期発見と治療が鍵となります。
心臓腫瘍の種類
心臓自体あるいはその周囲に腫瘍が発生する事が犬では比較的多くあります。
種類としては、血管肉腫、大動脈小体腫瘍(ケモデクトーマ)、異所性甲状腺癌などが知られています。
血管肉腫は、犬に発生する心臓腫瘍全体の約7割を占めます。
症状
他の心臓病と似ていることが多く、見逃されやすいことがあります。以下のような症状が見られることがあります。
- 元気や食欲の低下、体重減少
- 疲れやすさ:以前よりも運動を嫌がる、すぐに疲れるなど
- 発咳や呼吸困難:息切れ、咳、呼吸が浅くなるなど
- 不整脈
- 腹部の膨らみ:腹水がたまることで腹部が膨らむ
- 急性の虚脱や心タンポナーデによるうっ血性右心不全
- 腫瘤破裂による急性失血
- 失神:突然倒れることがある
診断方法
- 心臓超音波エコー検査:心嚢水、右心耳あるいは右心房の腫瘤を確認します。
- 胸部X線検査:心臓腫瘤の検出は難しいが、心嚢水貯留や右心拡大が見られることがあります。
- 細胞診:心嚢水の細胞診で血管肉腫が確定診断できることは稀ですが、腫瘤の発生部位、大きさ、転移病巣の有無などを総合的に評価します。
心臓腫瘍は早期発見が難しいため、定期的な健康診断が重要です。もし心配な症状を感じる際は、早めに獣医師に相談することをお勧めします。
一般的な治療法
心膜穿刺:
心タンポナーデ(心臓周囲に液体が溜まる状態)による症状を緩和するために、心嚢水を抜去します。効果は一時的です。
外科的切除:
腫瘍が限局している場合、外科的に切除することがあります。完全に取り除くことができれば、予後が改善する可能性はあります。
化学療法:
血管肉腫などの悪性腫瘍に対しては、外科的切除後に化学療法を併用することがあります。これにより、生存期間を延長することが報告されています。
放射線療法:
一部の腫瘍に対しては、放射線療法が有効な場合があります。ただし、心臓周囲の組織に対する影響を考慮する必要があります。
支持療法:
緩和療法で、痛みや不快感を軽減するための疼痛管理療法や、栄養管理療法などが含まれます。
上記の手術や化学療法などの対処法は極めて高価で、リスクもあり、費用対効果はあまりいいとは言えません。
新しいアプローチ
プロプラノロールを使用できるとなると、かなり安価に治療に臨むことができます。心臓腫瘍のある犬は通常、初期には症状が現れないため、ふだんからの健康診断が大切です。特に、循環器科における心エコー検査ができる施設、経験に富んだ循環器科の診断医は不可欠です。プロプラノールが早く使える様になることを願っています。
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僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症は「僧帽弁の閉鎖が不完全な状態になる」病気の総称です。通常では心臓内の血流は一方通行ですが、弁の閉鎖が不完全になることで逆流が生じます。国内では小型犬での発症が多くみられます。レントゲン検査や超音波エコー検査を行うことによって、心臓の状態を評価し、ステージにあった投薬を行っていきます。病気は進行しますので、定期的な循環器科検査と進行ステージに合った投薬やケアが必要になります。
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肺水腫
上記の僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、左心房の血圧が上がることで肺からの血液が心臓に戻ってきにくくなります。そのため、肺に水(血液)が貯留することで肺水腫が起こります。非常に苦しいため、首を伸ばしたり呼吸数が顕著に増加します。すぐに対応しないと命に関わる可能性が高い疾患です。酸素室での酸素吸入で苦しさを軽減し、利尿剤を用いて肺の水を抜いてあげることが必要です。
先天性の心奇形
先天的心疾患は生まれつき、心臓やその周囲の血管に構造的な異常があることです。その種類や奇形の程度により症状は様々です。症状を示さない場合もあり、普通に成長し寿命を全うできる子もいます。一方、生後間もなく成長と共に重篤な症状を示し、亡くなる子もいます。心室中隔欠損症(VSD)、動脈開存症(PDA)、肺動脈狭窄症(PS)、ファロー四徴症(TOF)のような種類が知られています。
肺炎
肺炎は病原体が肺に感染し炎症を起こす病気です。肺は酸素を取り込み、二酸化炭素を出す器官で、ここに炎症が起こると換気が不十分になり、呼吸困難を起こし、息がゼーゼーと早くなります。体調も悪くなります。場合によっては、命に関わるおそれもあります。
病原体には細菌、ウイルス、真菌(カビ)などがあり、感染した病原体によってはほかの臓器にも感染が広がることがあります。また、食物や胃の内容物などを誤嚥して起こる誤嚥性肺炎、寄生虫やアレルギーによって引き起こされる肺炎もあります。