犬・猫の前庭疾患とは?|突然ふらつく・首が傾く原因と治療|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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犬・猫の前庭疾患とは?|突然ふらつく・首が傾く原因と治療

【東京ウエスト動物病院 東京都・小平市】

「突然ふらふらと歩き始めた」
「首が片側に傾いている」
「目が左右に細かく揺れている」

犬や猫にこのような症状が現れたら、前庭疾患(ぜんていしっかん)の可能性があります。

前庭疾患は、体のバランスを保つ仕組みに異常が起こる病気です。
耳の奥が原因のこともあれば、脳に病気が隠れていることもあります。
突然症状が出た場合は、自己判断せず、できるだけ当日中に動物病院を受診しましょう。

■1.前庭疾患って、どんな病気?
「前庭(ぜんてい)」という名前には、ちょっと面白い由来があります。
犬や猫の耳は、「外耳」「中耳」「内耳」の3つに分かれています。
外耳は音の入り口です。中耳には鼓膜と耳小骨(じしょうこつ)があり、音の振動を内耳へ伝えます。

図:犬・猫の耳の構造
外耳・中耳・内耳の位置と
主な構造を示した模式図

耳の奥にある「内耳(ないじ)」は、「三半規管」「蝸牛(かぎゅう)」「前庭」の3つの部分からできています。

前庭は、蝸牛と三半規管の2つの間にある、小さな部屋のような場所です。建物の入り口にある「玄関ホール」にたとえて、この名前が付けられました。

前庭は、頭の傾きや体の動きを感じる大切な場所です。三半規管は頭の回転を感じ、蝸牛は音を聞く働きをします。
前庭は、頭の傾きや体の動きを感じる大切な場所です。

前庭や三半規管、前庭神経、脳が協力して、犬や猫の体のバランスを保っています。この仕組みを「前庭系」と呼びます。

前庭系に異常が起こると、体のバランスがうまく取れなくなり、ふらついたり、首が傾いたり、目が揺れたりします。
人の強いめまいに似た状態と考えると、わかりやすいでしょう。

■2.どんな症状が出るの?
主な症状には、次のようなものがあります。

斜頸(しゃけい):首が片側に傾く
眼振(がんしん):目が左右・上下・回転方向に繰り返し動く
平衡障害:ふらつく、まっすぐ歩けない、片側に倒れる
吐き気・嘔吐:めまいのような状態によって気持ち悪くなる

重症では、立ち上がれず、横になったままになることもあります。
ただし、これらの症状がすべて現れるわけではありません。

■3.耳の病気?それとも脳の病気?
前庭疾患は、異常が起こる場所によって、大きく2つに分けられます。

● 末梢性前庭疾患(まっしょうせい)

耳の奥の内耳や、そこから脳につながる前庭神経に異常が起こります。

主な原因には、中耳から内耳へ広がる炎症(中耳炎・内耳炎)や、猫でみられる耳のポリープなどがあります。
また、原因が特定できない「特発性前庭症候群」は、特に高齢犬でみられます。

● 中枢性前庭疾患(ちゅうすうせい)
脳幹(のうかん)や小脳(しょうのう)など、脳のバランスを調整する部分に異常が起こります。

脳炎、脳腫瘍、脳の血管障害などが原因となります。
意識の異常や手足の麻痺、反応の低下などを伴う場合は、脳の病気をより強く疑います。

首の傾きやふらつきだけで、耳と脳のどちらが原因かを判断することはできません。

 

● 前庭疾患になりやすい犬種・猫種はあるの?
犬では、フレンチ・ブルドッグ、キャバリア、スプリンガー・スパニエルなどで、前庭疾患が比較的多く報告されています。

猫では、シャムやバーミーズに先天性の前庭疾患が報告されています。

ただし、前庭疾患はどの犬種・猫種でも起こり、特に高齢犬では注意が必要です。

関連記事:「わかることシリーズ5 耳掃除、外耳炎」

■4.目が揺れるのは、なぜ?
前庭系は、体のバランスだけでなく、頭が動いたときに視線を安定させる働きにも関係しています。

そのため、前庭系に異常が起こると、眼球が自分の意思とは関係なく繰り返し動く「眼振」が現れることがあります。

眼振の方向や現れ方は、異常が起きている場所を調べる重要な手がかりです。

特に、上下方向の眼振や、頭の位置によって眼振の方向が変わる場合には、脳の病気を疑うことがあります。
ただし、眼振があるからといって、必ず脳の病気とは限りません。

また、眼振と視力低下は別の問題です。急に見えにくくなった場合には、網膜や視神経などの検査も必要になります。

関連記事:「犬・猫が突然見えなくなったら?|目・網膜・視神経・脳のどこに原因がある?」

■5.どうやって原因を調べるの?
まず、首の傾き、歩き方、意識の状態、手足の反応などを調べます。

東京ウエスト動物病院では、症状に応じて次の検査を組み合わせます。

● 神経学的検査:歩行、姿勢、反射などを確認
● 眼科・神経眼科検査:眼振、眼球の位置、瞳孔反応などを確認
● 耳の検査:外耳道や鼓膜の状態を確認
● 血液・血圧検査:全身の病気や似た症状を起こす原因を調べる

東京ウエスト動物病院では、眼科・神経科・内科の視点から総合的に診察し、MRI・CT検査が必要な場合は専門施設と連携しています。耳の奥や脳の異常は、通常の耳の検査だけではわからない場合があります。

■6.前庭疾患は治るの?
回復の可能性は、原因によって異なります。

原因不明の特発性前庭症候群では、数日以内に改善が始まり、2〜4週間ほどで大きく回復する犬や猫もいます。
ただし、首の傾きが少し残る場合もあります。

中耳炎・内耳炎では原因に応じた治療を行い、脳の病気では専門的な検査や治療が必要になります。

吐き気が強い場合や、自力で食事・歩行ができない場合には、点滴や入院管理が必要になることもあります。

■7.突然ふらついたら、どうすればいい?
急に首が傾いたり、ふらついたりした場合は、できるだけ当日中に受診しましょう。

特に、意識がおかしい、けいれんする、手足に麻痺がある、何度も吐いて水も飲めない場合は、直ちに救急受診が必要です。

受診までの間は、階段や段差から落ちないようにし、無理に歩かせず、安全な場所で休ませてください。
症状の動画を撮影しておくと、診断の手がかりになります。

東京ウエスト動物病院では、神経学的検査と眼科検査、耳の検査を組み合わせ、異常の原因を調べています。

早めの診察が、適切な診断と治療につながります。

参考資料
1.猫の前庭症候群の最新専門書(2026年)

Kay W Jr. Vestibular Syndrome. In: The Feline Patient, 6th ed. Wiley, 2026.
猫の末梢性・中枢性前庭疾患、症状、原因、治療方針についての専門解説です。2025年12月にオンライン公開されています。
Wiley Online Library 専門書の該当章

2.猫196例の末梢性前庭疾患の研究(2025年)
Caldero Carrete J, et al. Peripheral vestibular syndrome in cats: Clinical presentation, diagnostic findings and outcome in 196 cases. Veterinary Record. 2025;197:e5324.
中耳炎・内耳炎、耳のポリープ、特発性前庭症候群などの原因を検討した多施設後ろ向き研究です。紹介病院の症例であるため、結果を一般の猫全体にそのまま当てはめることはできません。

3.犬猫の特発性前庭症候群(2023年)
Mertens AM, Schenk HC, Volk HA. Current definition, diagnosis, and treatment of canine and feline idiopathic vestibular syndrome. Frontiers in Veterinary Science. 2023;10:1263976.
特発性前庭症候群の診断や治療に関する専門家の考え方を調査した研究です。多くの症例で数日以内に改善が始まること、原因を除外して診断することなどの根拠になります。

4.末梢性と中枢性の鑑別についての専門資料
Diagnosis and Treatment of Vestibular Disease. World Small Animal Veterinary Association Congress Proceedings. 2013.
神経学的検査、眼振、姿勢反応などから、病変部位を推定する考え方の参考資料です。

5.犬の前庭疾患の治療と予後
VCA Animal Hospitals. Vestibular Disease in Dogs.
特発性前庭症候群での回復経過、支持療法、自宅での転倒防止など、飼い主様への説明に役立つ専門病院の資料です。

6.犬の前庭疾患と好発犬種に関する疫学研究(2020年)
Radulescu SM, et al. Vestibular disease in dogs under UK primary veterinary care: Epidemiology and clinical management. J Vet Intern Med. 2020;34:1993–2004.

7. 猫のシャム・バーミーズにおける先天性前庭疾患
Vernau KM, LeCouteur RA. Feline vestibular disorders. Part II: Diagnostic approach and differential diagnosis. Journal of Feline Medicine and Surgery. 1999;1(2):81–88.
DOI: 10.1016/S1098-612X(99)90064-5
シャム・バーミーズの先天性前庭疾患に関する記載あり

Web問診はこちら – 東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661  FAX: 042-349-7662
犬・猫の健やかな歩みを守るために。
ふらつきや首の傾き、目の小さな変化も、東京ウエスト動物病院へご相談ください。

 

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