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【2026年10月改訂|東京ウエスト動物病院 東京都・小平市】
かつて「治らない病気」とされていた猫伝染性腹膜炎(FIP)。
しかし、近年の抗ウイルス薬の進歩により、現在では多くの猫で回復が期待できる病気へと変わってきました。
2026年の最新の国際ガイドラインでは、治療の成功率が90%を超える報告も紹介されています。
この記事では、FIPの症状や診断方法、最新の治療薬、治療期間、再発の可能性について、飼い主様にわかりやすく解説します。
■1.猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)とは?
FIPは、猫コロナウイルス(FCoV)の感染に関連して発症する、全身性の重い炎症性疾患です。
猫コロナウイルスは珍しいウイルスではなく、多くの猫が感染する可能性があります。しかし、感染した猫の大部分はFIPを発症しません。
一部の猫では、ウイルスの変化や免疫反応が関係してFIPを発症すると考えられています。
特に2歳未満の若い猫に多いものの、成猫や高齢猫にも発症します。
猫コロナウイルス陽性=FIPではありません。
■2.FIPは治る病気になったの?
はい。現在では適切な抗ウイルス治療によって、多くの猫で回復が期待できます。
2019年にGS-441524という抗ウイルス薬の有効性が報告されて以来、FIP治療は大きく進歩しました。
さらに2026年の欧州ABCDガイドラインでは、GS-441524による治療成功率が90%を超える研究結果も紹介されています。
ただし、すべての猫が回復できるわけではありません。重症度、治療開始までの時間、神経症状や眼の病変、合併症などによって経過は異なります。
FIPが疑われたら、できるだけ早く診断と治療について相談することが大切です。
■3.FIPにはどんな症状があるの?
FIPは、病気が起こる場所によって症状が異なります。
病気のタイプ 主な症状
ウェット型(滲出型) お腹が膨らむ、胸やお腹に水がたまる、呼吸が苦しくなる
ドライ型(非滲出型) 長引く発熱、食欲低下、体重減少、臓器の炎症
眼に症状が現れる場合 眼の濁り、充血、瞳孔の異常、見えにくさ
神経に症状が現れる場合 ふらつき、歩行異常、けいれん、意識や行動の変化
これらの症状は重なって現れることもあります。
特に、熱が続く、食べない、お腹が膨らむ、呼吸が苦しい、突然ふらつくといった症状には注意が必要です。
呼吸困難やけいれんが見られる場合は、緊急の診察が必要です。
■4.FIPはどのように診断するの?
FIPの診断は、ひとつの血液検査だけでは確定できないことが多く、複数の検査を組み合わせて判断します。
主な検査は、血液検査、超音波検査、レントゲン検査、胸水・腹水検査、猫コロナウイルスのPCR検査などです。
血液検査では、貧血、グロブリンの増加、アルブミンとグロブリンの比率(A/G比)の低下などが参考になります。
また、胸水や腹水がある場合には、その液体を調べることが診断上とても重要です。
PCR検査が陽性でも、それだけでFIPと確定できるわけではありません。
反対に、検査結果が陰性でもFIPを完全には否定できない場合があります。
診断の確実性を高めながら、FIPの可能性が十分に高い場合には、治療開始を不必要に遅らせないことが大切です。
■5.2026年の最新FIP治療|どんな薬が使われるの?
現在のFIP治療では、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が中心となります。
代表的な治療薬は次のとおりです。
① GS-441524(経口薬)
現在、最も多くの研究報告があり、治療の中心となっている薬剤です。
飲み薬による治療が可能で、初日から経口投与を開始できる猫も多くなっています。
② レムデシビル(主に注射薬)
GS-441524と関連する抗ウイルス薬です。
全身状態が非常に悪い場合や、飲み薬を受け付けない場合などに使用が検討されます。
状態が改善した後は経口薬へ切り替えることもあります。
③ モルヌピラビル
FIPに対する効果が報告されている別の抗ウイルス薬です。
ただし、副作用や安全性に関する注意点があるため、GS-441524などが使用できる場合には、一般にそれらが優先されます。
実際に使用できる薬剤や製剤は国や地域によって異なります。
日本国内でも、薬剤の承認状況、品質、入手方法を確認し、獣医師の管理下で治療を行う必要があります。
■6.治療期間は84日間? 42日間でも治るの?
ここは近年、大きく進歩した部分です。
従来、FIPの抗ウイルス治療は84日間(12週間)が一般的でした。
しかし、新しい研究では、条件を満たす猫では42日間(6週間)の治療でも良好な結果が得られることが示されています。
2024年の前向き比較試験では、主に胸水・腹水を伴うFIPに対して、42日間と84日間のGS-441524治療で同等の効果が報告されました。
この知見は、2026年の国際ガイドラインにも反映されています。
ただし、すべての猫が42日間で治療を終えられるわけではありません。
治療終了は、全身状態、血液検査、炎症の改善、眼や神経の症状などを総合的に判断して決定します。
自己判断で薬を減らしたり、途中で中止したりしないことが大切です。
■7.治療中はどんなことに注意するの?
治療が順調に進んでいる場合、数日以内に発熱や食欲、元気の改善が見られることがあります。
ただし、見た目が元気になっただけでは、治療終了とは判断できません。
治療中は次のような項目を確認します。
✓食欲、元気、体重の変化
✓発熱や胸水・腹水の改善
✓貧血、肝機能、血液タンパク質の変化
✓眼や神経の症状
✓薬の副作用や服薬状況
体重が増えた場合には、適切な投与量を維持できているか再確認することも重要です。
治療後も再発の可能性があるため、一定期間の経過観察を行います。
■8.FIPが眼に現れることもあるの?
FIPでは、眼に炎症が起こることがあります。
代表的な病変はブドウ膜炎で、眼の内部に炎症が生じます。
眼が白く濁る、赤くなる、瞳孔の大きさが変わる、見えにくくなるなどの症状が現れることがあります。
眼底の網膜や脈絡膜に炎症が及ぶ場合もあります。
眼の異常は、FIPを疑う重要な手がかりになることがあります。
そのため、全身の検査に加えて、必要に応じて眼科検査を行うことも大切です。
■9.FIPはほかの猫にうつるの? 予防はできる?
猫コロナウイルスは、主に感染猫の便を介してほかの猫に広がります。
しかし、一般的な猫コロナウイルス感染とFIPの発症は同じではありません。FIPを発症した猫から、必ずほかの猫にFIPがうつるわけではありません。
家庭でできる対策としては、トイレの清潔な管理、過密飼育を避けること、猫が落ち着いて暮らせる環境を整えることなどが大切です。
現時点では、FIPを確実に予防できる方法は確立されていません。
■10.東京ウエスト動物病院からのアドバイス
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療は、ここ数年で大きく変わりました。
以前は治療が難しかった病気ですが、現在では多くの猫に回復の可能性があります。
一方で、診断が難しい場合や、病状の進行が速い場合もあります。
「FIPかもしれない」と言われたら、あきらめる前に治療の可能性を相談してください。
東京ウエスト動物病院では、FIPに関する診察・相談を受け付けています。
猫の体調や検査結果を確認し、必要な検査と治療についてご説明します。
あきらめないで、その子にできる治療を一緒に考えましょう。
東京ウエスト動物病院 東京都・小平市
TEL:042-349-7661 FAX:042-349-7662
参考資料
1. European Advisory Board on Cat Diseases(ABCD). Update on Treatment of Feline Infectious Peritonitis. Viruses, 2026.
2. International Cat Care. An Update on the Treatment of Feline Infectious Peritonitis. July 2025.
3. Zuzzi-Krebitz et al. Short Treatment of 42 Days with Oral GS-441524 Results in Equal Efficacy as the Recommended 84-Day Treatment in Cats Suffering from Feline Infectious Peritonitis with Effusion. Viruses, 2024.
4. Brostoff et al. Treatment of non-effusive feline infectious peritonitis using oral remdesivir or GS-441524: a randomized, double-blind, non-inferiority trial. Journal of Feline Medicine and Surgery, 2026.
当院では FIP アドバイスを実施しています。診察、治療をご希望の方は連絡を入れて下さい。
Web問診はこちら – 東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661 FAX: 042-349-7662
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