犬と猫の高血圧 – 要因と種類、診断、標的臓器、治療、管理、認識と対処|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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犬と猫の高血圧 – 要因と種類、診断、標的臓器、治療、管理、認識と対処

犬と猫の高血圧について簡単にご紹介致します。
自宅での血圧日誌を作る、通院時に時々血圧を測ってもらうなどは良い方法と思われます。なお、こちらの 猫の高血圧症の最初の解決策 もご参照下さい。

当院における参考紹介記事はこちら ↓  になります。
● 血圧はどうやって測るの?
猫の高血圧症の最初の解決策について

次の事柄についてご紹介致します。
1.高血圧症(全身性)とはどのような状況か、その要因と種類
2.診断方法
3.標的臓器
4.治療
5.管理
6.認識と日常での対処法

1.高血圧症(全身性)とはどのような状況か? また、その要因と種類について述べます。
全身性高血圧は、持続的な収縮期血圧の上昇のことです。
一般的に次の3つに分類(要因と種類)されます。
1-1.状況による高血圧 Situational hypertension
ふだんは、正常血圧なのですが、通院、外出、緊張、不安、興奮などの要因で引き起こされる血圧上昇です。自律神経系の変化によるで、何回か通院していただき、通院や病院での診察、検査に慣れていく機会を増やして、測定していく中で判断することになります。

1-2.二次性高血圧 Secondary hypertension
犬では、慢性腎不全、急性腎不全、副腎皮質機能亢進症、糖尿病、妊娠、原発性高アルドステロン症(稀)、褐色細胞腫、甲状腺機能低下症(稀)など、
猫では、慢性腎不全、糖尿病、甲状腺機能亢進症、妊娠、原発性アルドステロン症(稀)、褐色細胞腫(稀)、副腎皮質機能亢進症など、
すでに持っている疾患や病態に由来する持続的で病的な血圧上昇のことです。

さらに、血圧の上昇を起こす治療のための薬、あるいは毒物の摂取などにも注意は必要で、これらに伴う高血圧がないかどうかについても確認しておく必要はあります。

1-3.特発性高血圧 Idiopathic hypertension
原因が不明のタイプです。遺伝的な要因、体質などが絡むタイプで、本態性高血圧とも言います。

2.犬と猫における高血圧の診断について
高血圧の診断は、血圧を測ることで行われます。以下のような測定手順と基準値がベースとされています。
2-1.測定の手順
● 痛みを伴うことはありません。
● 隔離された静かな部屋で他の動物と接触しないようにします。飼主様に立ち会ってもらうのもいいと思います。
● 血圧測定を試みる前に5〜10分間、測定室に慣れさせます。鎮静剤などの薬物投与は行いません。
● ペットが好む体位で保定します。心臓(基底部)とカフの水平ラインをできるだけ揃えるためには伏臥位か横臥位がいいでしょう。優しく保定します。
● カフの幅は、カフ装着部位の周囲長の約30〜40%とします。
● カフを付ける場所は、動物の大きさ、忍耐力、検査する者の好みに応じて四肢や尾を選びます。
● 動物が落ち着いて、ジッとしている時に行います。
● 最初の測定値は破棄し、2回以上、できれば5~7回ほど測定して安定した数値を得るようにします。
● 平均値を取り、結果(血圧測定値)とします。

犬の血圧測定中
お座り抱っこして落ち着いた状況で計ります。

猫の血圧測定中
ケージに入ってもらいバスタオルをかけ落ち着いた状況で検査を進めます。

2-2.犬と猫における高血圧の基準値
収縮期圧が、140mmHg以下は正常と判断されます。下表のように140mmHg以上の範囲によって3種類のリスク(前高血圧、高血圧、重度の高血圧)に分けられます。

3.標的臓器
最高血圧が高いと4つの標的臓器(目、心臓および血管系、脳、腎臓)が日常的にジワリと確実にダメージを受け続けていきます。

障害としては、
3-1.高血圧による臓器障害は、血管が多い臓器に見られます。
・ 腎臓 → 慢性腎疾患の増悪 → 【腎不全の進行】
・ 目 → 網膜症・脈絡膜症 → 【網膜剥離、網膜出血、視力低下、失明】
・ 脳 → 脳症、脳卒中 → 【出血、意識障害】
・ 心臓および血管系 → 左心室肥大、左側のうっ血性心不全(まれ)、大動脈瘤/解離(まれ) → 【 心不全の増悪】
などが見られます。


高血圧の標的臓器(腎臓、目、脳、心臓血管系)

3-2.臨床兆候や所見としては、
・ 腎臓 → Cr値、SDMA値 の持続的増加あるいは GFR の減少、持続的な蛋白尿、ミクロアルブミン尿など
・ 目 → 突然(急性発症)の失明、滲出性網膜剥離、網膜出血・浮腫、網膜血管蛇行または血管周囲浮腫、乳頭浮腫、硝子体出血、前気腫、続発性緑内障、網膜変性など
・ 脳 → 中枢神経系の神経学的異常(脳、脊髄)など
・ 心臓および血管系 → 左心室肥大、ギャロップ音、不整脈、収縮期心雑音、左側のうっ血性不全の兆候、出血(例,鼻出血、脳卒中、大動脈破裂など)
などが見られます。

3-3.診断としては、
・ 腎臓 → 血清クレアチニン値、SDMA値、BUN値の評価、蛋白尿やアルブミン尿の定量的評価を伴う尿検査、GFRの測定
・ 目 → 眼底検査を含む眼科検査(神経学的眼科検査、一般眼科検査、その他必要に応じて)
・ 脳 → 神経学的検査、MRIまたはその他の画像検査
・ 心臓および血管系 → 聴診、胸部X線検査、超音波心エコー検査、心電図検査、血圧などが必要です。

早期発見、早期治療は大切で、気づかずにいると、この沈黙の病気(高血圧)は深刻な状態につながり、時には死に至る可能性も出てきます。血圧を計ることで発見できます。大切な検査です。

4.治療が必要な高血圧
血圧が高ければ高いほど、高血圧症によって体の臓器にダメージが及びます。標的臓器の障害(Target Organ Damage (TOD)のリスクは高まるため迅速な対応が必要です。
4-1.標的臓器障害(TOD)の徴候が既にあり、収縮期血圧が160mmHg以上あるなら直ぐに治療を始めます。
4-2.収縮期血圧が160mmHg以上の場合は、4~8週間後に再検査を行い、高血圧の有無をチェックし、必要であれば治療の見直しを行います。
4-3.収縮期血圧が180mmHg以上の場合には、1~2週間後に再検査を行い、高血圧の有無をチェックし、必要であれば治療の見直しを行います。

高血圧症治療の目的は、血圧を適正化させることで標的臓器障害の発症確率と重症度を下げることです。目標血圧は、収縮期血圧が140mmHg未満の正常血圧ですが、収縮期血圧が160mmHg以上の時には、最低限の治療目標ラインとして将来標的臓器障害になる可能性の低域(収縮期血圧が160mmHg未満)を目標とします。

5.犬と猫における高血圧の管理
5-1.犬の高血圧症は、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や慢性腎臓病(慢性腎不全)が原因である二次性高血圧が特に多い傾向にあるため、これら基礎疾患の治療と高血圧症の治療を同時に進める必要があります。また、高血圧症により標的臓器障害(TOD)が確認される場合には、それらに対する併用治療も必要となります。
犬の高血圧症に対する治療は降圧剤による治療が主体となり、ベナゼプリル(フォルテコール)、エナラプリルが第一選択薬として用いられます。難治性の血圧管理の際には、テルミサルタン(セミントラ)やアムロジピンなど、他の薬の併用も行われます。

5-2.猫における高血圧の管理
猫の高血圧症は、甲状腺機能亢進症や慢性腎臓病(慢性腎不全)が原因である二次性高血圧が特に多い傾向にあるため、これら基礎疾患の治療と高血圧症の治療を同時に始めます。また、犬同様に高血圧症により標的臓器障害(TOD)が認められる場合には、それらに対する併用治療も必要です。

猫の高血圧症に対しては、アムロジピンベシル酸塩が降圧治療の第一選択薬となります。難治性の血圧管理の際には、テルミサルタン(セミントラ)やベナゼプリル(フォルテコール)など、他の薬の併用も検討されることはあります。

6.高血圧症の認識と日常での対処の方法
犬や猫の全身性高血圧の病態生理学、測定、治療に関してはまだまだ発展途上にあり、国際的なガイドラインの内容も新しく変更されていくものと思われます。アメリカ獣医内科学会 [ACVIM, American College of Veterinary Internal Medicine] からの情報更新を再確認していくことは必要です。
ペットがシニアの年齢(通常は7歳位)に達してきたら、ルーティンな血圧測定は欠かせません。愛ペットのための血圧日記を作るのもいいと思います。

〈参考文献〉
ACVIM consensus statement: Guidelines for the identification, evaluation, and management of systemic hypertension in dogs and cats.  J Vet Intern Med. 2018 Nov;32(6):1803-1822.

こちらの 猫の高血圧症の最初の解決策 もご参照下さい。Web問診はこちら – 東京ウエスト動物病院
TEL:042-349-7661   FAX: 042-349-7662
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