1歳の若い猫における低カリウム血症の事例紹介|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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1歳の若い猫における低カリウム血症の事例紹介

事例紹介:
1歳の若い猫、Nちゃんです。9584  ミックス、1歳、メス(避妊済み)、体重4.8Kg 

経過:
今回のテーマである低カリウム状態が見つかること41日前が当院での初診(両目を細めるなどを主訴に)
でした。
その時は眼科で来院されたのですが、さかのぼること6ヶ月前から両目が細くなってしまうとのことでした。それらの症状が出る3ヵ月前に保護猫として現在のオーナーの所に引き取られていました。

検査:
初診時は眼科系の内容でしたので、神経学的眼科検査、一般眼科検査、角膜のRealPCR検査(ヘルペス、カリシ、クラミジア、マイコプラズマなど)、猫ウイルス検査(FeLV、FIV、FCoV)、一般身体検査を実施しています。

結果、両目のドライアイ(STT:6mm/5″、5mm/5″)、両目の高眼圧(39.6mmHg、33.6mmHg) が見つかり、治療をスタートしています。猫白血病、猫エイズは共に陰性、猫コロナウイルス抗体価は 800倍で陽性(伝染性腹膜炎:FIPの発症はないと思われました)の数値でした。

以後、ドライアイ、高眼圧に対する治療を始めていきました。ドライアイに対する改善感は得られています。高眼圧に対しては抵抗感を示す経過でしたが、少しずつ正常眼圧内に入る状況でした。眼圧は両目とも時々高くなる時はありました。

頭を上げられない:
初診から41日目に 『今朝から頭を上げられない、首が痛いのか? 下の方を向いている、歩かず丸まって横になっている、口元にフードを持っていくと食べる、食欲はある』などで、『様子がおかしい』とのことでした。

診察:
顔つきは下の写真のような具合で、割としっかりしていました。

しかし、身体は下の写真のようにぐったりとしていて、触ると柔らかく力は入っていません。顔は上げられない様子で横を向いてうなだれる、筋肉に力が入っていないという印象でした。

血液所見:
血液検査は、今回の体調不良(首が上げられない、下を向いている歩かず丸まって横になっているなど)を受けて初めて行いましたが、多血症、高蛋白、高グロブリン、炎症マーカー(SAA)値の上昇、電解質異常は見られました。今回の症状と関連性がありそうなものとしては、下図に示す電解質のアンバランスがありました。K値の低値、Cl値の高値という電解質のアンバランスが特徴的でした。今回のような脱力感の症状は、低カリウム血症の特徴的な所見の1つと言われていて、これが原因ではないかと思われました。

治療と経過:
対症療法としては、K剤を添加した静脈点滴やK剤の経口補給で電解質のアンバランスの調整を取ることを主眼にスタートしました。幸い食欲はありました(食事中の動画を下に示します)

低K血症の若い猫の食事中の動画(舐めるように食べている、頭は上げられない、目はうつろ)
いつもより食べる勢いは落ちていますが、食べてはくれますので、薬の経口投与はできました。すこしでも自力で食べてくれたのは助かりました。

カリウム製剤:
治療薬としてのカリウム製剤は、点滴の場合は下の写真のようなものを使っています。

落ち着いてきて、飲み薬として使う場合は、下記のものを使っています。

電解質の推移:
電解質の値の推移は、下の表に示した通りです。

K値の正常化が得られるにつれて電解質のバランスも改善されています。
この子の
体調も改善し、通常の行動(歩様、頭部の上げ下げ、箱の上に上がるなど)が見られるように回復していきました。

考察:
この子の低K値やCl高値の原因や要因は不明でした。飼主様の言葉では、首が上がらないという症状が出る1~2週間前から食欲は少し落ち気味だった、ウンチの量も少し落ちていた、ウンチは毎日2回していて、食欲もなくなったわけではありませんでした。はっきりとした要因は不明でした。

フードの摂取不足のほか、ドライアイや高眼圧のための点眼薬の影響など、また、腎機能障害由来も考え、UPCを含む尿検査なども行いましたが、尿蛋白、腎機能障害、腎不全はなく、要因になるものは明らかにできませんでした。カリウムは通常食べ物から得られるので、よほどの食欲廃絶、重度な消化器障害(嘔吐や下痢など)がなければ低カリウムになることは考えにくいです。例えば、心不全などの心機能障害があり利尿剤を服用している際に、途中で食欲が落ち、利尿が続いてしまい低カリウムになることは考えられますが、この子ではそのような背景はありませんでした。どうして、この子が低K、高Na、高Clの様相を呈したのか、その原因は明らかにはできませんでした。一方、カリウム製剤を補給することで改善が得られていったのは事実で、何らかの要因で電解質異常が引き起こされたものと考えられました。回復でき、退院にこぎ着けられたのはとても良かったと思います。

当院では キャットアワー(猫の予約診療) を実施しています。
診察、治療をご希望の方はご連絡を。
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