良化維持が難しい緑内障とはこんな病気 – 眼科の東京ウエスト動物病院|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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良化維持が難しい緑内障とはこんな病気 – 眼科の東京ウエスト動物病院

1.緑内障とは
目の中の圧(眼圧)が高くなった状態のことを言います。眼圧上昇の幅は軽度なものから重度なものまで様々です。球結膜血管の怒張、赤目、角膜の混濁、眼圧の上昇、激痛、失明などが突発的に出てきます。

大事な事は、一見緑内障のように見えないケースでも正確に眼圧を計り、症状や経過と併せて総合的に判断することです。先手々の対処が望まれます

原因としては、ブドウ膜炎、眼内炎、出血、隅角の形成異常、水晶体脱臼、特発性などが挙げられます。

下図の矢印のような方向に眼房水は流れていますが、その通路が障害され、ある閾値を超えると眼圧が高くなってきます。急激に上がる場合もあれば、徐々に上がる場合もあります。中には乱高下するケースもあります。

眼圧が高い場合は、視神経や網膜などの組織障害が起こり『視力が低下したり、失われる』ことになります。完治が難しい病気で、犬だけではなく、猫、兎などでも見られます。眼房水の流れ(水色の矢印)
この流れが障害を受け、ある閾値を超えると眼圧が上昇してきます。

人では正常眼圧緑内障のタイプもありますが、ペットではこのようなタイプの緑内障は知られていません。

2.突然やってくる急性緑内障
特に、柴犬にとても多く、この急性タイプの緑内障は日常的に遭遇しやすい病気です。予告無しに突然襲ってきます。特に、柴犬は好発品種で要注意です。

失明と目の中の激痛がペアでやってきます。あまりの痛さに目は開けられません。痛さをこらえてブルブル震えたり、その場に立ちつくしたり、元気がなくなりうずくまったり、キャンと鳴いたり、食欲をなくす子もいます。

3.緑内障のタイプ
原発性緑内障と続発性緑内障の2つのタイプがあります。

3-1.原発性緑内障
このタイプは、遺伝性の関与があると言われており、特定の犬種(柴犬、ハスキー、ビーグル、シーズー、パピヨン、ラブラドールレトリバー、アメリカンコッカースパニエル、マルチーズ、チワワなど)に多く見られます。下図のように、柴犬はダントツに多い品種です。遺伝子検査も開発されていますので、あらかじめ受けておいて発症のリスクの有無、発症しやすさなどをつかんでおくことも良いでしょう。

柴犬に多い急性原発性緑内障

 

3-2.続発性緑内障
このタイプは、主に白内障の進行や水晶体の脱臼(水晶体が元の位置から外れること)に伴ったり、感染性のブドウ膜炎などにより2次的に引き起こされることが多いです。犬、猫、兎などにおいては、白内障の進行に伴い水晶体蛋白誘発性のブドウ膜炎が引き起こされるケースは日常的によく診られます。ブドウ膜炎により、また白内障の進行に拍車がかかり悪循環を繰り返すようになります。この悪循環から緑内障に移行することも報告されています。当院では、白内障の予防とブドウ膜炎を抑制させる処置はセットで行うようにしています。

4.検査・診断について
4-1.眼圧検査
眼圧検査は最も重要な検査です。正常な眼圧は、犬も猫もだいたい15~22mmHgです。品種による差も知られていますが、大型品種では少し下がる傾向があります。眼圧計がその威力を発揮するのは少し高い、少し低いなど微妙な、判断に困るような時です。明らかに高い、低い場合は指での触感的にもわかるものですが、どちらかわかりにくい時にこそ眼圧計は頼りになります。眼圧次第で治療の流れは変わりますので、数値として認識することはとても大切なことです。

急性緑内障での眼圧測定急性緑内障での眼圧測定

4-2.臨床症状
臨床症状では激烈な痛みと失明が見られます。急性緑内障の所見は、結膜炎と似たところがあります。結膜炎と誤診され、目薬で様子を見ましょう。一週間後に再度診せて下さいでは手遅れになってしまいます。そのような事例は多く見られます。

神経のダメージはできるだけ早く取り除く必要があります。急性緑内障に対する救急療法は最大でも3日以内に、できるだけ早いほうがよいので、当日や翌日など1日でも早く始めることが大切です。

日にちが経ってしまった場合は、視力の回復は困難な状況となり、治療の目標は痛みの軽減に向けることになります。

ギュッと閉じている瞼をそ~っと開くと、赤目(白目の赤い血管の怒張、発赤)、透明な角膜の白濁(この白濁のため目の中は見えにくくなります)が確認できます。これらは急性緑内障の特徴です。

右目の急性緑内障

4-3.各種検査
他の検査として、スリットランプ検査、超音波エコー検査などがあります。角膜、前眼房、虹彩、水晶体などの状況を精査します。時には眼底の検査も行います。

5.治療
5-1.急性緑内障の場合
視力の回復が可能か否かの判断をすることは大切なことで、そのためには、正確な診断が必要です。視力回復の可能性があると判断された際には、直ちに緑内障治療のための眼科救急療法に入ることが何よりも大切です。発症からできるだけ早い時期(発症当日~最大3日まで)に眼圧を下げる救急療法に入ります。

通常は、入院下にて行います。全身状態の評価から入り、目に対する局所療法、全身療法、綿密な眼科検査を繰り返し行い評価していきます。効果が得られた場合は、その後、飲み薬、目薬に切り換え、安定した状態が確認できれば数日後の退院に向けて準備を進めていきます。

5-2.慢性緑内障の場合
慢性緑内障においては、視力の回復という治療目的は外れるので、痛みの軽減がその目的となります。内科的な対処で限界がある場合は、外科的手術による方法をお薦めしています。

手術には
(1) 緑内障レーザー手術(半導体レーザーによる経強膜毛様体光凝固術)
(2) シリコンボール挿入手術
(3) 眼球摘出手術
などの処置方法があります。飼主様との話合いの中でどのような方法を取り入れていくか相談して決めて行くことになります。

(1) 緑内障レーザー手術(半導体レーザーによる経強膜毛様体光凝固術)

半導体レーザーによる経強膜毛様体光凝固術毛様体の部分を破壊し、房水の産生を抑えます

(2) シリコンボール挿入手術(義眼を入れる手術となります)
視力の回復はありませんが、目、瞼はそのまま残り、まばたきや目の動きはそのまま残せます。
見た目の違和感かほとんどありません。お勧めの術式となります。

眼内に挿入する医療用シリコンボールと専用の器材眼内に挿入する医療用シリコンボールと専用の器材

この子は右目にシリコンボールが入っていますこの子は右目にシリコンボールが入っています

(3) 眼球摘出手術
眼球そのものがなくなりますので、目薬の投薬からも開放されるメリットはあります。

犬の眼球摘出の事例犬の眼球摘出の事例

猫の眼球摘出の事例猫の眼球摘出の事例

ただ、反対側の目の管理や緑内障発症の予防など継続的な観察や診察・対処は必要です。

緑内障は完治が難しい病気で、目薬や飲み薬が長期になる厄介な病気です。負担としては、毎日の投薬(目薬、飲み薬)、費用、通院の負担、ケアが長期になるという精神面での負担などがあります。その中で薬による副作用のことも問題になり、一時休薬や中止を考慮する場合もあります。どうしても手術は避けたいという飼主様もおられますが、このような様々な負担から解放されるには、外科的処置は良い手段です。いくつかの術式があり、それぞれにメリット、デメリットがあります。どの術式を、どのタイミングで実施するか、飼主様とよく相談して決めて行くことになります。

6.最後に
犬の急性原発性緑内障は若い柴犬で多く、失明に至りやすい、視機能を失いやすい病気です。愛犬の事を思うと決してあなどれません。

よくあることなんですが、症状が似ている結膜炎と誤診されて抗生剤や抗炎症剤の目薬を処方され1週間後に診せて下さい・・・となってしまう流れがあるのですが、こうなると手遅れです。

誤診されやすい結膜炎と緑内障の赤目状態誤診されやすい結膜炎と緑内障の赤目状態

視力回復のチャンスを逃し、目の痛み軽減も不十分なものとなってしまいます。

当院からのお願い
当院では、ふだんからペットの目の異常について様々な情報を発信しています。飼主の方に小さな異常に気づいてあげて下さいと言うだけでなく、病院側が飼主の方々にこのような点についてよく見てあげて下さいというピンポイントな見方のヒントを伝えることこそが大事な役目と考えています。

病気のことまで詳しく知って下さい、小さな仕草に気づいて下さいといってもなかなか難しいと思いますし、何を、どう見たらよいのか、何が異常なことなのか、捉えきれない状況を変えることはとても大変なことと思います。私たち、東京ウエスト動物病院が発信する情報に触れていただき、愛らしい、可愛いらしいペットたちを一緒に見守っていきたいと思います。

こちらの記事 緑内障 もご参照下さい。

Web問診はこちら – 東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661   FAX: 042-349-7662
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