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SCCEDS(スケッツ)を克服する:【40年の眼科に経験豊富な獣医師が徹底解説】
【こんな症状ありませんか?】
・犬で目薬を続けているのに症状の改善がない
・何週間も目の傷が治らず残っている
・角膜びらん、角膜潰瘍が治らない
・白っぽく濁っている
・涙が止まらない
・目をショボショボ(痛みの症状)している
・「もう少し様子を見ましょう」が続いている
もし当てはまる場合、
“普通の角膜潰瘍ではない”可能性があります。
SCCEDS(スケッツ、自発性後天性角膜上皮欠損)は、昔はボクサー潰瘍や難治性角膜潰瘍とも呼ばれていました。
SCCEDS(スケッツ)を理解できる図を下に示します。

また、以下のような状況でのお悩みがあれば、早めの診察が必要です。

SCCEDS(スケッツ)は、
✔ 長期疼痛
✔ 感染
✔ 深層化
✔ 穿孔
まで行く可能性があります。
■ はじめに
目に傷がありますねと言われて目薬を続けているのに、なかなか良くならない・・・
・目がショボショボしている
・涙が多い
・目をつぶっている
・白っぽく濁っている
このような状態が続く場合、普通の傷ではない角膜潰瘍の可能性があります。
それが今回お話しするSCCEDS(シーシーイーディーエス、スケッツ)です。
■ SCCEDS(スケッツ)とは?
SCCEDS(シーシーイーディーエス、スケッツ)は、
Spontaneous Chronic Corneal Epithelial Defect
(自発性慢性角膜上皮欠損)
と呼ばれる病気です。
簡単にいうと、
角膜の表面が自然と剥がれてしまい、傷(潰瘍)になる病気です。
治療を行ってもなかなか治らない病気です。
通常の角膜潰瘍であれば、
数日〜1週間ほどで改善へ向かうことが多いですが、
SCCEDS(スケッツ)では、
何週間も治らないことがあります。

■ なぜ治らないのか?
通常の角膜潰瘍では、
「治そうとする反応」が起こります。
しかしSCCEDSでは、
表面の細胞が土台にうまく接着できません。
そのため、
✔ 治らない
✔ はがれる
✔ 再発する
を繰り返します。
さらに、
通常みられる「新生血管」も乏しく、
治ろうとする反応が弱い
ことが特徴です。
■ SCCEDS(スケッツ)でよく見られる所見
✔ フルオレセイン染色で縁が浮く
✔ 上皮がペラっとめくれる
✔ 白っぽく濁る
✔ 周囲が静か
✔ 新生血管が乏しい
✔ 1〜2週間以上治らない
また、
✔ 涙が多い
✔ 目を細める
✔ ショボショボする
など、
慢性的な痛みの症状が見られます。
ただし、
激痛で全く目を開けられない
というより、
ずっと違和感や痛みが続く
というイメージの病気です。
■ なぜ治りにくいの?【ここは少し専門的なお話】
正常な角膜では、
表面の上皮細胞は「基底膜」という土台にしっかり接着しています。
しかしSCCEDS(スケッツ)では、
✔ 基底膜異常
✔ 接着装置(ヘミデスモソーム)の異常
などにより、
上皮が安定して接着できない状態になっていると考えられています。
さらに、
剥がれた角膜表面にはHAZ(hyaline acellular zone):
ヒアリン無細胞帯あるいは硝子様無細胞帯
と呼ばれるエリアが角膜前実質に形成され、
上皮接着障害が引き起こされると考えられています。
つまりSCCEDS(スケッツ)は、
治る力が弱い病気
というより、
くっつく構造そのものに問題がある病気
と言えます。
■ 治療
〜治すために必要な処置〜
SCCEDS(スケッツ)は、
目薬だけでは改善しないことが少なくありません。
治療では、
浮いてしまった上皮
を取り除き、
新しい上皮がしっかり接着できる環境を作ること
が重要になります。
■ SCCEDS(スケッツ)治療の流れ
STEP1
デブライドメント(浮いた上皮の除去)処置
滅菌綿棒を用いて、
浮いた角膜上皮をやさしく除去します。
処置のイメージを下に示します。

SCCEDS(スケッツ)では
浮いてしまった上皮を丁寧に取り除き、
新しい上皮が接着しやすい環境を整えます
STEP2
マイクロブラシやダイヤモンドバー処置
マイクロブラシやダイヤモンドバーを用いて、
角膜表面を整えます。
くっつく土台を作ることで、
治癒を促進します。
処置のイメージを下に示します。

SCCEDS(スケッツ)では
浮いてしまった上皮を丁寧に取り除き、
新しい上皮が接着しやすい環境を整えます
STEP3
外科治療(難治例)
改善が難しい場合には、
角膜に細かな処置を加えて、
上皮が接着しやすくする方法を用います。専門的には、角膜乱刺手術 あるいは 角膜格子状切開(グリッド角膜切開)手術
などと呼ばれます。
最後に、角膜を守りながら治すことを目的として、
角膜の保護処置を行います。
専門的には、瞬膜・球結膜フラップ手術と呼ばれます。 手術画像
難治性症例のケースでは、
上記のステップを実施することで改善に向かうケースは多くあります。
■ 実際の事例
事例1
《内科・処置で改善したケース》
ポメラニアン/10歳/去勢オス/3.3kg
数週間、点眼治療を続けていましたが改善せず来院されました。
《検査所見》
✔ 角膜の白濁
✔ 浮いた上皮
✔ 角膜上皮障害、角膜潰瘍
✔ 新生血管の乏しさ
を確認しました。
初診時の角膜所見を下に示します。

《診断》
SCCEDS(スケッツ)自発性後天性角膜上皮欠損
《処置》
滅菌綿棒によるデブライドメント処置を実施しました。

《治療》
デブライドメント処置後は目薬、内服薬、エリザベスカラーによる治療を開始しました。
《経過》
数日で痛みは軽減し、効果が出るのは早かったです。
1週間ほどで改善は見られ、角膜表面も安定化していきました。
1週間ほどのところでの左眼所見を下に示します。

角膜の軽い混濁感はまだありますが、改善感は十分に出ていました。
早期に見極めて処置を行うことで、短期間で改善するケースはあります。
事例2
《外科・処置を併用して改善したケース》
ジャックラッセル・テリア/10歳/去勢オス/5.7kg
長期間、左目をショボショボさせ、涙が多いとのことで来院されました。
《検査所見》
✔ 左目角膜の白濁
✔ 浮いた上皮
✔ 新生血管の乏しさ
✔ フルオレセイン染色陽性
初診時の角膜所見を下に示します。

《診断》
SCCEDS(スケッツ)自発性後天性角膜上皮欠損
《治療》
目薬、内服薬、エリザベスカラーによる治療を開始しました。
しかし11日後も十分な改善は見られず、
改善なく横ばい、あるいは悪化の印象でした。

そこで、手術による治療をご提案しました。
《手術》
内科的な治療では改善は得られなかったため、外科的治療を施しています。
角膜表面をデブライドメントし、上皮が再接着しやすい状態に整えました。
その後、角膜乱刺手術を行いました。動画 角膜乱視手術 15秒
さらに角膜を保護するために瞬膜・球結膜フラップ手術を実施しました。
下にその写真を示します。

角膜を保護しながら治癒を待ち、約1か月後を目安にフラップ解除を検討します。
約50日後には角膜表面は安定し、フルオレセイン染色でも染まらない状態まで改善しました。
50日後の角膜所見を下に示します。

改善している様子がうかがえます
長期化したSCCEDSでは、デブライドメントだけで改善しないケースもあります。
そのような場合には、状態に応じて外科的治療をご提案します。
長期化したSCCEDS(スケッツ)では、
✔ なかなか治らない、むしろひどくなる
✔ 他院治療歴がある
✔ デブライドメントだけでは改善しない
ケースもあります。
そのような場合には、上記のような手術をご提案しています。
■ 実際のデブライドメント処置の様子
SCCEDS(スケッツ)では、浮いている角膜上皮をやさしく取り除き、新しい上皮がくっつきやすい状態に整えます。実際の処置イメージを動画でご紹介します。
■ 放置するとどうなる?
SCCEDS(スケッツ)は、
✔ 強い違和感や慢性的な痛み
✔ 長期間治らないストレス
✔ 深い潰瘍や穿孔
へ進行することがあります。
だからこそ、
なかなか治らない
その時点で、
一度しっかり評価することが大切です。
■ 東京ウエスト動物病院の考え方
1.「ただの傷」として扱わない
治らない時点で、
構造的な異常を疑います。
2.早期から“見極める”
上皮の状態、
新生血管の有無、
染色パターン、
品種、年齢などから、
SCCEDS(スケッツ)を早期に見極めます。
3.最短で治す戦略を立てる
状況によっては、
点眼だけでは改善が難しいケースもあります。
必要なタイミングで、
処置・外科治療をご提案します。
結果として、
✔ 治療期間短縮
✔ 痛みの軽減
✔ 再発予防
につながります。
■ 飼い主様への大切なメッセージ
もし、
✔ 目の傷がなかなか治らない
✔ 本当にこの治療でいいのか不安
✔ 「もう少し様子を見ましょう」が続いている
✔ なぜ治らないのか知りたい
そのような場合には、
SCCEDS(スケッツ)の可能性があります。
「治らない傷」には、理由があります。
目の傷が長引いている場合は、
一度専門的な評価を受けることをおすすめします。
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■ まとめ
SCCEDS(スケッツ)は、
「ただの角膜潰瘍」
ではなく、
くっつく構造そのもの
に問題がある病気です。
そのため、
目薬だけでは改善しないことがあります。
しかし、
✔ 適切な処置
✔ 正しい見極め
✔ 必要なタイミングでの外科治療
によって、
改善へ向かうケースは多くあります。
なかなか治らない その時点で、
一度専門的な評価を受けることが大切です。
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