ペット(犬や猫)のがん疾患について知っておきたいこと|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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ペット(犬や猫)のがん疾患について知っておきたいこと

皆さま、こんにちは。東京ウエスト動物病院 副院長の佐藤隆です。当院では、毎年、がん啓発月間を設けています。この時期に私たちは、飼主様が大切にしているペットの健康について考える機会を共有するようにしています。

がんは、ペットにも発症する可能性はあり、早期に気づくことで治療の選択肢が広がります。今回は、ペットがかかるがん疾患について、わかりやすく解説致します。

ペットのがんを根絶したり、100%寛解にもっていくことはなかなか難しい事ですが、早期に発見できれば、治療の選択肢を検討できるメリットはあります。進行してしまい、もう治療をあきらめざるを得ないという段階に至ってしまうのは残念なことと思われます。何よりもふだんの生活で、体の違和感、痛み感、空腹感、生活の質の低下、精神面での落ち込みなどを強いられ、我慢の生活の連続であることはとても辛いことと思います。飼主様に対策を考えていただく一助になれば嬉しい限りです。

予約ご希望の方は、最初に、当院宛てに連絡(電話)を入れて頂き、診察日(初診日)[時間帯予約制です]を決めて下さい。なお、第1、3、5木曜は午後も診療を行っています。
TEL: 042-349-7661 
FAX: 042-349-7662

・ご来院日が決まりましたら、その前日までに問診票にご記入いただき送信して下さい。
・『ご来院当日の持ち物など』は、こちらからご確認下さい。

1.犬や猫にもがんがある?
がんとは、体内の細胞が異常に増殖し、周囲の組織に侵入していく病気です。人間に限らず、犬や猫もがんにかかることがあります。特に高齢のペットに多く見られますが、若いペットでも発症することがあります。がんにはさまざまな種類があり、症状や治療方法もそれぞれで異なります。

2.代表的ながんの種類と特徴
①犬のがん
さまざまな種類がありますが、よく見られるものとしては、

犬乳腺腫瘍(特に未避妊の雌犬に多い

悪性リンパ腫

皮膚がん(肥満細胞腫、悪性黒色腫など)、

目の中のがん(悪性黒色腫、リンパ腫など)、
肝臓がん

脾臓のがん
口腔内のがん

消化管のがん、膀胱がん、腎臓のがん、
骨肉腫(右後肢の関節部での骨増生所見)

肺のがん、
心臓のがん
神経系のがんなどです。

②猫のがん
犬に比較するとがんの種類は少ないと言われています。10種類ほどのがんの中で、トップ5は、
猫乳腺腫瘍
リンパ腫、肥満細胞腫、扁平上皮癌、線維肉腫で、がん全体の80%以上を占めます。これら5つのがんには注意しましょう。特に、リンパ腫は様々な場所に発生するので、鑑別診断が大切です。

その他のがんとしては、
肺のがん

各種がんの特徴
(1) 乳腺腫瘍(犬、猫)

犬、猫の雌に多い病気で、乳腺にできる腫瘍です。早期に発見すれば、手術で治療できる場合もありますが、進行すると転移することがあり、注意が必要です。
犬の乳腺腫瘍
猫の乳腺腫瘍

(2) リンパ腫(犬・猫)
リンパ腫はリンパ球という免疫細胞に発生する血液のがんで、犬にも猫にもよく見られます。初期症状がわかりにくいことが多いため、体調不良や食欲不振が続く場合は、早期に獣医師に相談することが大切です。

犬のリンパ腫

(3) 皮膚腫瘍(犬・猫)
皮膚にできる腫瘍は良性のものから悪性のものまでさまざまで、見た目に変化が現れることがあります。例えば、皮膚にしこりができた、傷が治らない、または出血を伴うような場合には、すぐに獣医師に見てもらいましょう。
悪性のものとしては肥満細胞腫、扁平上皮癌、線維肉腫などが上げられます。

由来不明の腺がん、腸腺がん、由来不明の肉腫、アポクリン腺のがん、メラノーマなどが知られています。また、猫のリンパ腫と口の扁平上皮癌は飼主からの受動喫煙(猫は体を舐めることで体に付いたタバコ成分の粒子を摂取してしまう)の影響を受ける事が知られています。

 

皮膚肥満細胞腫への外科的治療の事例はここをクリック

(4) 目の中の腫瘍(犬・猫)メラノーマ

、リンパ腫、腺がんなどが上げられます。
メアrノーマは一部だけ取り除くことが難しいため、肺転移がない場合は眼球摘出術が推奨されます。

(5) 口腔内のがん(犬・猫)
口腔内や歯茎にがんができることがあります。初期段階では、口臭がひどくなる、食事中に痛がる様子が見られることが多いです。気づかずに放置すると、進行が早いため、注意が必要です。悪性としてはメラノ-マなどが上げられます。

(6) 骨肉腫(犬)
特に大型犬に多く見られる骨のがんです。痛みのため足を引きずる、跛行(はこう、びっこ)をするなどの症状が見られます。激痛を伴うことが多いため、麻薬系の鎮痛剤を併用することが必要です。早期に検査、治療を受けることが重要です。

3.がんの早期発見がカギ!
ペットのがんは、初期には目立った症状が出ないことが多いのが特徴です。そのため、飼い主様が日々の観察をしっかりと行うことが非常に大切です。以下のような変化に気づいたら、早めに動物病院を受診してください。

    • 食欲不振やムラが出る
    • 体重減少(小型犬や猫では新生児用の体重計を用いて正確に計る、月に1回程度)
    • 元気がなくなってくる
    • まぶた、顔、胸、お腹、手足、お尻などの皮膚にしこりができる
    • 乳腺部にしこりでできる
    • 鼻出血、他の部位からの異常な出血や分泌物がある

 

  • 吐き気、嘔吐や下痢などの消化器系の症状が続く

これらの症状があった場合は、がんに限らず、他の病気の可能性も考えられますが、早期に獣医師による診察を受けることで、早期発見・早期治療が可能になります。

4.がんと品種
ペットのがんの発生と品種
がんの種類や発生率は、遺伝的要因、環境要因、さらには生活習慣などの複合的な影響を受け、特定の品種において腫瘍が多く発生することが研究で明らかになっています。以下に、犬や猫のがん発生に関する品種ごとの傾向をいくつか示します。

犬のがん
シーズーやチワワなどの小型犬では、乳腺腫瘍や皮膚腫瘍(例えば皮膚の良性腫瘍)にかかるリスクが高い傾向にあるとされています。

ダックスフンドは、脂肪腫(脂肪の腫瘍)や椎間板ヘルニアが発生しやすいですが、近年では特定の腫瘍(例えば皮膚の腫瘍)に関連する遺伝的素因も指摘されています。

ドーベルマン・ピンシャーは、皮膚の悪性腫瘍(例えば、悪性黒色腫)やリンパ腫にかかりやすい傾向が知られています。

ボクサーは、心臓に関わる腫瘍(特に心臓血管腫瘍)や皮膚の良性腫瘍、基底細胞腫、血管腫も比較的多く発生しやすいとされています。

ゴールデン・レトリーバーなど大型犬は、特に骨肉腫(おおきな骨にできる癌)やリンパ腫(リンパ系のがん

)が発生しやすい品種です。これらの腫瘍は比較的若い犬にも見られることがあります。

猫のがん
雑種猫は、口腔内がんやリンパ腫が多い傾向にあります。

ペルシャ猫は、腎臓がん、膀胱がんのリスクが高いとされています。また、皮膚の基底細胞腫も見られることがあります。

サイベリアンキャットは、腫瘍に関連する遺伝的素因があるとされ、皮膚がんや乳腺がんにかかりやすい傾向があるとされています。

シャム猫は、膀胱がんや尿路系のがんが多く見られる品種とされています。

がん発生のメカニズム
腫瘍が発生する理由は複雑で、遺伝的な素因が大きな役割を果たします。特定の遺伝子が異常をきたすことによって、細胞が制御不能に増殖し腫瘍が発生します。また、加齢、環境要因(例えば化学物質や紫外線)、食事、免疫系の状態も腫瘍のリスクを高める要因です。

遺伝的要因とがん
特定の品種では、腫瘍にかかりやすい遺伝的要因があることが分かっています。例えば、遺伝的な素因があると、特定の品種に特有の腫瘍(例えば骨肉腫やリンパ腫)を発症するリスクが高まることが研究で示されています。

5.がんが疑われる場合の診断方法
もしがんが疑われる場合、どのような診断が行われるのでしょうか?一般的な流れとしては、まずは詳細な問診や触診、血液検査を行います。その後、必要に応じて画像診断(レントゲン、超音波、CTスキャンなど)や、腫瘍から組織を採取して行う生検が実施されることもあります。これにより、がんの種類や進行状況をより正しく把握できるようになります。

6.がん治療の選択肢がんの治療は、根治を目指すものと緩和を目指すものに分けられます。緩和療法はがんと闘わず共存をはかるもので、痛みの軽減、栄養補給などできることを行い、ペットと飼主様に寄り添いサポートしていくものです。どちらの方法にも外科手術、化学療法、放射線治療、免疫療法、その他があります。

治療や対処の方法は、がんの種類や進行具合に応じてさまざまです。一般的な対処の方法としては以下のものがあります。

手術:腫瘍が局所的であれば、手術によって腫瘍を取り除くことが可能です。
通常の手術による切除手術
クライオサージェリー(凍結手術)
レーザーを利用した蒸散切除術
抗がん剤治療:進行したがんに対しては、抗がん剤を使ってがん細胞を減らす治療が行われることがあります。
放射線治療:一部のがんに対して、放射線を使ってがん細胞を壊す治療方法です。
どの治療方法が最適かは、獣医師と飼主様でよく相談し、ペットの状態に最も合った方法を選ぶことが重要です。

緩和療法:がんと闘わず共存をはかるもので、病気による痛みや不快感などを軽くしたり、取り除くケアのことを『緩和ケア Palliative Care(パリエイティブケア)』と呼び、最近、注目されています。当院では積極的に取り入れています。

激しい痛みの例としては、がんの痛みのほか、椎間板の痛み、術後の痛み、歯の痛み(虫歯、歯肉炎など)、目の痛み(角膜潰瘍、白内障、ブドウ膜炎、緑内障など)、骨折、広範囲の火傷、尿道結石などの痛みもあります。また、呼吸の苦しみには、肺の腫瘍、肺炎、貧血など、皮膚の激しい痒みには、外部寄生虫や寄生体による強い皮膚炎などもあります。

このような強いストレスに対して、痛みの軽減、栄養補給などできることすべてを行い、ペットと飼主様に寄り添いサポートしていく対処すべてを含むものとなります。

具体的な方法としては、レーザー照射療法(図1)、

抗炎症療法、鎮痛剤、麻薬(フェンタニルなど)の使用(注射、のみ薬、貼り薬、座薬)があります。

下図に示すのは、フェンタニールパッチという貼り薬です。

実際の事例で、フェンタニールパッチを貼っている所です。

下に示すような注射剤もあります。状況によって使い分けていきます。

痛み止めは、通常の痛み止め薬から麻薬まで段階に応じて選択していきます。

痛み、苦しみ、痒みなどの症状を和らげることは、このようなストレスの軽減や解放を意味し、ペット達はとても楽になり、治療効果が上がるだけでなく、食欲が出てくる、体力の改善を計るなどQOL(クオリティオブライフ)を高める上でも大変効果的です。

当院のある事例で飼主様からのお声をいただいたことがあります。その一部を紹介致します。
《老犬の緩和ケアでお世話になりました。
末期癌で痛みが辛かった愛犬に、緩和ケアで痛み止めのパッチを毎週処方して頂きました。
通院前は、食事もなかなか食べてくれなかったのですが、こちらに通い始めてたくさんご飯を食べられるまで元気になりました。
通院を始めて4ヶ月で残念ながら亡くなってしまいましたが、亡くなる前にこちらの病院に出会えて本当に感謝しています。》

予後をどう過ごすかということは大事なことです。

7.ペットががんになるリスクを下げる方法や対策
がんの完全な予防方法はありませんが、適切なフードや運動、ストレスの少ない環境の提供などは基本的に大事な事です。ペットが欲しがるからと言って何でも与えることは止め、きっちりとした食事管理を課し、運動する時間を与えることは大切です。

定期的な健康チェックや予防接種を受けさせることはペットの健康維持には多いに役立ちます。積極的な行動としては、ペットのがんの早期発見のために年1~2回の健康診断を受けることも良いと思われます。

去勢・避妊手術を受けることは、特に前立腺疾患、膀胱炎、乳腺腫瘍、卵巣がん、子宮腺がんのリスクを低減することがわかっています。

8.ペットのがんとの向き合い方
がんという診断を受けた際に感じるであろう心情に寄り添いたいと思います。多くの飼主様は「なぜうちの子が?」と感じ、そして「これからどうしていけばいいのか?」と不安に思われることでしょう。がんの診断はとても重いものですが、重要なのは早期発見です。がんが早期に発見されることで、治療の選択肢も広がり、ペットができる限り快適に過ごせる時間を延ばすことは可能となります。

どのように向き合うか
がんの治療が始まると、ペットは体調の変化を経験することが多くあります。食欲が落ちたり、元気がなくなることもあります。しかし、これらの症状が必ずしもがんの進行によるものではなく、治療による一時的な副作用の可能性もあります。そのため、飼主様としては焦らず、ペットの状態に合わせたケアを心がけることが大切です。

食事:がんの治療中、食欲が低下することがあります。少量ずつでも栄養価の高いフードを与え、必要に応じてサプリメントや療法食を取り入れることを検討して下さい。食事の工夫がペットの体調維持に役立つことがあります。

休養とリラックス:がんの治療を受けている間、ペットは体力を消耗し疲れやすくなることが多いです。静かな環境で休ませてあげることが重要です。散歩や遊びの時間も少しずつ調整し、ペースを合わせてあげましょう。

痛みの管理がんそのものや治療の過程で痛みが出ることもあります。獣医師と連携し、痛みを和らげるための薬や治療法を取り入れることで、ペットの生活の質を向上させることができます。当院では痛み緩和ケアを積極的に取り入れています。

心のケアと家族のサポート:ペットががんと向き合っている中で、飼主様自身の心のケアも大切です。ペットが病気に立ち向かっている姿を見守ることは、非常に辛いものです。しかし、飼主様がポジティブな姿勢を持ち続けることで、ペットにも安心感を与えることができます。

また、ご家族とペットのケアについてよく話し合い、皆で支え合うことが重要です。ペットのケアにおいては、飼主様一人で全てを背負う必要はありません。家族で協力し合いながら、ペットを支える環境を作り上げていきましょう。

9.まとめ
ペットのがんは、遺伝的な背景や環境要因に大きく影響されると言われています。特定の品種に特有のがんが偏って発生しやすいという傾向があります。ペットのがんは早期発見・早期治療がカギです。日頃からペットの体調に気を配り、異変を感じたらすぐに動物病院に相談することが重要です。がんは怖い病気ですが、早期に対処を受けることで多くのペットが救われる機会を増やすことはできます。

この「がん啓発月間」をきっかけに、ペットの健康について改めて考え、愛犬・愛猫のためにできることを始めてみましょう。

ご質問などありましたら、当院までご相談下さい。皆さまの大切なペットの健康を守るため、また、ペットと過ごす日々が少しでも長く、幸せなものであるよう、私たち獣医師、看護師も精一杯サポートさせていただきます。

どんな小さなことでも気になることがあれば、いつでもご相談下さい。寄り添いの気持ちを第1に接して参りたいと思います。

やさしく、あたたかい、確かなペット医療を!!

東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661 FAX: 042-349-7662
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