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【東京ウエスト動物病院 東京都・小平市】
「猫の瞳孔が大きくなった」「目が赤い」「最近、見えにくそうにしている」
こうした症状の原因の一つに、房水誤流症候群(ぼうすいごりゅうしょうこうぐん)という、猫に特徴的な目の病気があります。
別名「悪性緑内障」とも呼ばれますが、がんのことではありません。
目の中の水分の流れに異常が起こり、水晶体が虹彩(茶目)と一緒に前方へ押され、眼圧が上がることがある病気です。
進行すると視力を失う可能性があるため、早期の眼科検査が大切です。
■1.房水誤流症候群とは、どんな病気?
目の中には「房水」という透明な水分があり、目の形や健康を保っています。
房水誤流症候群では、目の中の水分(房水)の流れに異常が起こり、その一部が硝子体側へ入り込むことが、病気の仕組みの一つと考えられています。
その結果、
– 水晶体と虹彩が一緒に前方へ押される
– 前房(角膜と虹彩の間の空間)が浅くなる
– 房水が排出されにくくなり、眼圧が上昇することがある
という変化が起こります。

正常な猫の眼球(左)と房水誤流症候群の模式図(右)
右図では、房水が硝子体側へ入り込むことで、
水晶体と虹彩が前方へ押され、
前房が浅くなる仕組みを示しています。
硝子体内の青色の部分は、推定される房水の流れを
模式的に表したものです
水晶体脱臼とは異なり、房水誤流症候群では、水晶体を支える組織(チン小帯)が保たれたまま、水晶体と虹彩が一緒に前方へ押されることが特徴です。
詳しい発症原因は、まだ完全には解明されていません。
・犬、猫の目が赤い・痛がる時は要注意|それは緑内障かもしれません【症状・見分け方・治療】
■2.どんな猫に多いの? どんな症状が出るの?
中高齢の猫に多く報告されていますが、若い猫でも発症することがあります。
次のような症状がみられることがあります。
– 瞳孔が大きくなり、光を当てても小さくなりにくい
– 目が赤くなる
– 黒目の表面が白っぽく濁る
– 物にぶつかる、見えにくそうにする
– 目を細める、痛がる

猫の正常な瞳孔(左)と大きく開いた瞳孔(右)
房水誤流症候群では、
瞳孔が大きくなり、
光への反応が弱くなることがあります。
ただし、瞳孔の大きさは周囲の明るさでも
変化します
ただし、初期には目立った症状がない場合もあります。
突然見えなくなった、目が強く赤い、痛がって目を開けられない場合は、当日中の受診が必要です。
■3.水晶体脱臼とは、どう違うの?
どちらも水晶体が前方に移動することがありますが、以下のようにしくみが違います。

見た目だけでは区別が難しく、詳しい眼科検査が必要です。
・犬・猫の水晶体脱臼とは?|突然見えなくなる原因・症状・治療と手術
■4.どんな検査で診断するの?
主に次の検査を組み合わせます。
●眼圧検査
目の中の圧力を測定し、緑内障の有無や程度を確認します。
●細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ検査)
前房の深さ、水晶体や虹彩の位置、目の炎症などを調べます。
③ 眼球超音波検査
水晶体と硝子体の位置関係など、目の内部を確認します。
必要に応じて、視覚反応や眼底の検査も行います。
房水誤流症候群では、眼圧がまだ高くない段階でも、前房が浅くなっていることがあります。そのため、眼圧だけでなく、水晶体や虹彩の位置など、目の内部構造を詳しく調べることが大切です。
■5.治療はできるの?
治療の目的は、眼圧を管理し、視力をできるだけ維持することです。
●点眼薬による治療
房水の産生を抑える点眼薬などを用いて、眼圧の上昇を抑えます。目の状態によっては、複数の薬を組み合わせることがあります。
② 外科的治療
薬で眼圧を十分に管理できない場合には、手術を検討することがあります。
手術では、水晶体の摘出と、水晶体の後ろにある膜の切開、硝子体の一部を取り除く処置などを組み合わせることがあります。
ただし、手術には適応があり、すべての猫で実施できるわけではありません。
治療方法は、視力が残っているか、眼圧がどの程度上昇しているかなどを総合して判断します。
■6.視力は守れるの?
早い段階で発見し、眼圧を適切に管理できれば、視力を維持できる可能性があります。
一方、緑内障によって網膜や視神経に強い障害が生じると、視力の回復が難しくなることがあります。
また、片目だけでなく、両目に発症することもあるため、反対側の目の検査も大切です。
治療後も眼圧や視力を定期的に確認する必要があります。
■7.猫の目に異変があれば、早めの眼科検査を
東京ウエスト動物病院では、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、眼球超音波検査などを組み合わせ、猫の目の内部を詳しく調べています。
房水誤流症候群が疑われる場合も、水晶体脱臼やほかの緑内障との違いを確認し、目の状態に合った治療方針を検討します。
猫の目が赤い、瞳孔の大きさがいつもと違う、見えにくそうにしている場合は、早めにご相談ください。
参考文献
1.猫32頭40眼の臨床研究(2005年)
Putative aqueous humor misdirection syndrome as a cause of glaucoma in cats: 32 cases (1997–2003).
Journal of the American Veterinary Medical Association.
猫の房水誤流症候群の特徴をまとめた基本文献。前房の均一な浅さ、チン小帯の保持、眼圧上昇、視覚障害、超音波所見などが報告されています。
2.猫の房水誤流症候群に対する外科治療(2016年)
Atkins RM, Armour MD, Hyman JA.
Surgical outcome of cats treated for aqueous humor misdirection syndrome: a case series.
Veterinary Ophthalmology. 2016;19(Suppl 1):136–142.
7頭9眼の手術成績を報告。術後6か月以内に9眼中7眼で眼圧が25mmHg以下に管理され、術後1年の評価では全7頭の視覚が維持されていました。ただし、対象数が少なく、術後も点眼治療が必要でした。
3.Esson DW, Calvarese S. Feline Aqueous Humor Misdirection Syndrome (AHMS). Clinical Atlas of Canine and Feline Ophthalmic Disease, 2nd edition, Chapter 165. 2022.
猫の房水誤流症候群について、病態、診断、眼圧を下げる点眼治療などを解説した専門書。
4.若齢猫に発症した報告(2025年)
Pearce I, et al.
An unusual case of rapidly progressive aqueous humour misdirection syndrome in a 9-month-old Persian cross cat.
Veterinary Record Case Reports. 2025;13:e70081.
生後9か月の猫で急速に進行した症例の報告です。中高齢猫だけに発症する病気ではないこと、両眼に進行する可能性があることを示す重要な症例です。ただし、単独症例のため一般化はできません。
Web問診はこちら – 東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661 FAX: 042-349-7662
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