犬の食物アレルギーとは?涙やけ・外耳炎・かゆみとの関係、診断方法を解説【前編】|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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犬の食物アレルギーとは?涙やけ・外耳炎・かゆみとの関係、診断方法を解説【前編】

東京都・小平市|東京ウエスト動物病院

「フードを変えても良くならない…その症状、本当に食物アレルギーでしょうか?」
「何度も外耳炎を繰り返している」
「毎日のように足先をなめている」
「嘔吐や下痢を繰り返している」
「眼科治療をしているのに涙やけがなかなか改善しない」

このような症状で来院される犬は少なくありません。

診察でも、
「食物アレルギーでしょうか?」
「アレルギー検査をすれば原因が分かりますか?」

というご質問をよくいただきます。

しかし、犬の食物アレルギーは、症状や血液検査だけで簡単に診断できる病気ではありません。

食物に関連して起こる症状は、広く食物有害反応(Adverse Food Reaction:AFR)と呼ばれ、皮膚の痒みや外耳炎だけでなく、慢性的な嘔吐や下痢などの消化器症状として現れることもあります。
一方、アトピー性皮膚炎や感染症、消化器疾患などでも似た症状がみられるため、これまでの食事内容や治療歴、症状の経過などを総合的に評価することが大切です。
今回は前編として、犬の食物アレルギー・AFRの症状、診断、血液による補助検査、除去食試験について詳しく解説します。

 

1.犬の食物アレルギーとは?
食物アレルギーはAFRの一つです。食べ物によって起こる好ましくない反応を広く食物有害反応(Adverse Food Reaction:AFR)と呼びます。
AFRには、大きく分けると、
食物アレルギー:食物に対する免疫学的な反応が関与するもの
食物不耐性など:免疫学的な反応を介さないもの
があります。

食物アレルギーでは、食べ物に含まれるタンパク質などに対して免疫反応が起こり、皮膚や消化管などに症状が現れます。
「初めて食べた食材だからアレルギーになる」というわけではありません。
これまで問題なく食べていた食材に対して、後から症状が現れることもあります。
そのため、
「何年も同じフードを食べているから、食物アレルギーではない」
とは言い切れません。

食物アレルギーというと「IgE」という抗体を思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかし、食物アレルギーに関与する免疫反応は一つではありません。
IgEが関与する比較的速い反応だけでなく、リンパ球などの細胞性免疫が関与し、食物を摂取してから時間が経って症状が現れる反応も存在すると考えられています。

そのため、
「IgE検査が陰性だったから食物アレルギーではない」
とは必ずしも言えません。
実際の診療では、検査結果だけではなく、食事と症状との関係を確認することが重要になります。

2.犬の食物アレルギー・AFRではどのような症状がみられる?
犬のAFRで中心となるのは、皮膚症状(外耳炎を含む)と消化器症状です。

① 皮膚の痒み
代表的な症状の一つです。
特に、

  • 口の周囲
  • 足先
  • わき
  • お腹
  • 内股

などに痒みがみられることがあります。

症状が長期間続くと、脱毛、赤み、色素沈着、皮膚が厚くなる「苔癬化」などがみられることもあります。
ただし、このような症状は犬アトピー性皮膚炎でもよくみられます。
痒みの部位だけから食物アレルギーとアトピー性皮膚炎を区別することは困難です。

② 外耳炎を繰り返す
「耳を治療すると一度は良くなるけれど、しばらくするとまた外耳炎になる」
という犬では、背景にアレルギー性皮膚疾患が隠れていることがあります。
食物アレルギー・AFRでも、外耳炎は重要な臨床徴候の一つです。
そのため、慢性的な外耳炎では耳だけを治療するのではなく、皮膚全体の状態や食事内容なども確認することが重要です。

③ 慢性的な嘔吐・下痢
AFRでは、

  • 慢性的な嘔吐
  • 下痢
  • 軟便
  • 排便回数の増加

などの消化器症状がみられることがあります。

皮膚症状がほとんどなく、消化器症状が主体となる犬もいます。
ただし、嘔吐や下痢には非常に多くの原因があります。
「慢性的に吐いているから食物アレルギー」と決めつけるのではなく、必要に応じて他の消化器疾患や全身性疾患についても検査することが大切です。

後編では、実際に当院で経験した、食事の見直しによって慢性的な嘔吐が改善した事例をご紹介します。

★涙やけは食物アレルギーと関係がある?
「涙やけは食物アレルギーと関係がありますか?」
と聞かれることがあります。

犬の食物アレルギー・AFRでは、皮膚の痒みや外耳炎、消化器症状などがよく知られています。一方、結膜炎などの眼症状との関連も報告されています。
涙やけは病名ではなく、涙が眼の周囲にあふれることで被毛が変色した状態です。そのため、涙やけには、
涙液量や涙液の質の異常

  • ドライアイ
  • マイボーム腺機能不全
  • 眼瞼や睫毛の異常
  • 結膜や角膜の炎症

など、さまざまな要因が関係します。

食物アレルギー・AFRに関連した結膜炎が生じた場合には、眼表面の炎症や流涙の増加を介して、眼周囲の状態や涙やけに影響する可能性も考えられます。
ただし、涙やけそのものが食物アレルギー・AFRの代表的な臨床徴候というわけではなく、食事との関連についてもまだ十分に分かっていない部分があります。

当院では眼科診療も行っているため、涙やけがみられる場合には、眼そのものの状態を評価するとともに、皮膚症状、消化器症状、食事内容なども含めて総合的に原因を考えています。
実際の診療では、眼科的な治療だけでは改善しにくかった涙やけが、食事を見直した後に改善する犬を経験することもあります。
そのため、涙やけと食物アレルギー・AFRの関連を最初から否定するのではなく、さまざまな原因の一つとして食事との関連についても検討することが大切だと考えています。

後編では、実際に食事変更後に涙やけが改善した当院の事例もご紹介します。

3.食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は何が違う?
食物アレルギーと犬アトピー性皮膚炎は、症状だけでは区別することが難しい場合があります。
食物アレルギーでは食事中の成分が関係する一方、犬アトピー性皮膚炎では主に環境中のアレルゲンなどが関係します。
さらに、実際の診療では両者が併存していることもあります。

そのため、
「療法食に変えたけれど、痒みが完全になくならなかった」
というだけで食物アレルギーを否定することはできません。
食事によって痒みの一部が改善しても、アトピー性皮膚炎などによる痒みが残っている可能性があるためです。

犬のアトピー性皮膚炎については、「犬のアトピー性皮膚炎―当院が大切にしている『かゆみと向き合うつきあい方』―」で詳しく解説しています。

4.犬の食物アレルギー・AFRはどのように診断する?
「アレルギー検査をすれば原因がすぐに分かるのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、犬の食物アレルギーを血液検査だけで確定診断することはできません。

診断では、
問診・食歴の確認

皮膚・耳・消化器症状などの評価

症状の経過を記録

必要に応じて補助的な検査

除去食試験

食物負荷試験

という流れで評価していきます。

中でも重要なのが、「これまで何を食べてきたか」という食歴です。

普段のフードだけではなく、

  • おやつ
  • ジャーキー
  • デンタルガム
  • 人の食べ物
  • 投薬補助食品
  • サプリメント

などについても確認します。

食物アレルギーの診断では、血液検査だけに頼るのではなく、これまでの食歴と実際に食事を変更したときの症状の変化を確認することが重要です。

5.診断を補助する評価や検査
食物アレルギー・AFRの診断では、食歴や臨床症状を確認し、除去食試験による変化を評価することが基本となります。
その際、症状を客観的に評価したり、除去食を選択したりするために、いくつかの方法を補助的に利用することがあります。

PVAS(痒みスコア)
皮膚症状がある場合には、PVAS(Pruritus Visual Analog Scale:痒みスコア)を使って、痒みの程度を0~10で記録することがあります。
除去食試験の前後で同じ方法を用いて評価することで、「何となく良くなった」ではなく、痒みがどの程度変化したのかを把握しやすくなります。
皮膚の写真や、嘔吐・下痢の回数などを記録しておくことも有用です。

リンパ球反応検査
リンパ球反応検査は、食物に含まれる抗原に対してリンパ球がどの程度反応するかを調べる検査です。
特に細胞性免疫が関与する食物アレルギーを捉える可能性があり、食物負荷試験との比較で良好な一致を示した研究も報告されています。
近年では、食物を摂取してから時間が経って症状が現れる「遅延型」の食物アレルギーにおいて、リンパ球の反応を調べる検査の有用性を示す研究も報告されています。

当院では、これまでの食歴や症状などとあわせて、除去食を選択する際の補助検査の一つとして利用することがあります。
実際に、リンパ球反応検査の結果を参考に食事を変更することで、皮膚症状や消化器症状が改善する犬も経験しています。
ただし、検査結果だけで原因となる食材を確定したり、食物アレルギーを否定したりすることはできません。
検査結果と、実際に食事を変更したときの症状の変化をあわせて評価することが大切です。

IgE検査について
アレルゲン特異的IgE検査は、環境アレルゲンへの感作を評価する目的などで利用されています。
一方、食物アレルギーについては、IgE検査だけで原因食材を確定することは困難です。
また、食物アレルギーにはIgEが中心となる反応だけでなく、細胞性免疫が関係する反応もあると考えられています。
そのため、IgE検査が陰性だからといって、食物アレルギーを完全に否定することはできません。

6.食物アレルギーの診断で重要な「除去食試験」
犬の食物アレルギー・AFRを診断するうえで、除去食試験と、その後の食物負荷試験が非常に重要です。
除去食試験では、原因となっている可能性のある食材をできるだけ排除し、選択した食事だけを一定期間与えて症状の変化を確認します。

使用する食事としては主に、
加水分解食
または
新奇タンパク食
があります。

加水分解食とは?
タンパク質を小さな分子に分解し、免疫系が抗原として認識しにくくすることを目的とした食事です。
ただし、加水分解の程度や原材料は製品によって異なります。

新奇タンパク食とは?
これまでその犬が食べたことのない、あるいは摂取歴がほとんどないタンパク源を使用する方法です。
そのため、新奇タンパク食を選択する場合には、これまでの食歴を詳しく確認することが特に重要になります。
加水分解食と新奇タンパク食の違いや選び方については、後編でさらに詳しく解説します。

除去食試験はどのくらい続ける?
皮膚症状を評価する場合には、一般的に8週間程度を一つの目安として経過を確認します。
一方、嘔吐や下痢などの消化器症状は、食事変更後比較的早い段階から改善がみられることがあります。皮膚の痒みは改善を判断するまでに時間がかかることがあるため、症状に応じて適切な期間、除去食試験を継続することが大切です。
そして非常に重要なのが、
療法食以外のものをできるだけ口にさせないこと
です。

おやつ、ジャーキー、デンタルガム、人の食べ物、味付きの投薬補助食品などが入ると、正しい評価が難しくなります。
家族の一人がおやつを与えていた、散歩中に他の食べ物を口にしていた、といったことでも除去食試験の評価に影響する可能性があります。
そのため、ご家族全員でルールを共有して行うことが重要です。

除去食試験は「フードを変えてみること」ではありません
ここはとても重要なポイントです。
除去食試験は単なる「フード変更」ではなく、
食事を利用して症状と食物との関連を調べる診断試験
です。

適切な食事を一定期間しっかり継続し、その前後で皮膚症状や消化器症状がどの程度変化したのかを評価します。
そして除去食によって症状が改善した場合には、元の食事や疑わしい食材を再び与えて症状が再燃するかを確認する食物負荷試験を行うことで、食物との関連性をより明確にすることができます。

「療法食に変えたら良くなった」だけではなく、
除去すると改善する → 再び与えると症状が出る
という関係を確認することが、食物アレルギー・AFRの診断では重要になります。

7.まとめ
犬の食物アレルギーは、食物有害反応(AFR)のうち免疫反応が関与するものです。
代表的な症状は、皮膚の痒み、繰り返す外耳炎、慢性的な嘔吐や下痢などです。
また、AFRに関連した結膜炎などの眼症状も報告されており、涙やけがみられる犬では、眼科的な原因を評価しながら食事との関連について検討することもあります。

一方、これらの症状だけから食物アレルギーと診断することはできません。
PVASやリンパ球反応検査などは、症状の評価や除去食の選択に役立つことがありますが、あくまで診断を補助するものとして考えます。
食物アレルギー・AFRの診断で大切なのは、これまでの食歴を詳しく確認し、適切な除去食試験を行って症状の変化を評価することです。
さらに、除去食で改善した場合には食物負荷試験を行い、食事と症状との関連を確認していきます。

 

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