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【東京ウエスト動物病院 東京都・小平市】
「食物アレルギーかもしれないと言われたけれど、何を食べさせればいいの?」
「アレルギー用のフードに変えたのに、なかなか良くならない」
「除去食試験中は、おやつも全部やめないといけないの?」
食物アレルギーが疑われたとき、多くの飼い主様が最初に悩むのが、「何を食べさせればよいのか」という問題です。
しかし、食物アレルギーの食事管理は、単に「アレルギー用」と書かれたフードに変更すればよいわけではありません。
大切なのは、その犬がこれまで何を食べてきたのかを確認し、適切な除去食を選び、一定期間きちんと続けて症状の変化を評価することです。
前編では、犬の食物アレルギーについて、症状や診断方法を解説しました。
前編|犬の食物アレルギーとは?涙やけ・外耳炎・かゆみとの関係、診断方法を解説
後編では、実際にどのような食事を選び、どのように診断を確認していくのかを、当院の事例とともに説明します。
1.食物アレルギー治療の基本
食物アレルギーの治療で最も大切なのは、症状の原因となっている食物を避けることです。
ただし、「牛肉が怪しそうだから牛肉をやめる」といった自己流の変更だけでは、食事と症状の関係を正しく評価できないことがあります。そこで行うのが除去食試験です。
その犬に適した食事だけを一定期間与えて症状の変化を確認し、改善した場合には、原則として元の食事や疑わしい食材を再び与える食物負荷試験(チャレンジ試験)で症状が再発するかを確認します。
除去食で改善し、食物負荷試験で症状が再発することを確認することが、食事との関連を確かめる重要なステップです。症状や既往歴によっては安全面を考慮して実施しない場合もあるため、獣医師と相談して行います。
2.犬の食物アレルギーのフード選び|加水分解食と新奇タンパク食
除去食試験では、主に「加水分解食」と「新奇タンパク食」が用いられます。
加水分解食とは?
一言でいうと、タンパク質をとても小さく分解したフードです。タンパク質を細かくすることで、体の免疫が「反応する相手」として見つけにくくすることを目的としています。ただし、加水分解の程度や原材料は製品によって異なるため、「加水分解食ならどれでも同じ」というわけではありません。
新奇タンパク食とは?
一言でいうと、その犬が今まで食べたことのない肉や魚を使ったフードです。例えば、過去に一度も食べたことがなければ、魚や鴨などが候補になることがあります。
大切なのは「珍しい食材か」ではなく、「その犬が過去に食べたことがあるか」です。主食だけでなく、おやつやデンタルガムまで含めて食歴を確認します。
市販の「アレルギー用フード」と療法食は同じ?
市販の低アレルゲン・単一タンパクなどの表示があるフードと、動物病院で除去食試験に使用する療法食は、同じ目的・品質管理とは限りません。
除去食試験では、食べていないはずのタンパク質が混入すると結果の評価が難しくなります。そのため、
診断のために厳密な除去食試験を行う場合は、原材料や製造管理が明確な獣医療用療法食を基本として選びます。
『アレルギー用』という表示だけで選ばず、これまで食べたことのある食材が含まれていないか、加水分解の程度や原材料、製造時の混入対策などを確認することが大切です。診断のために厳密な除去食試験を行う場合は、獣医師と相談して、その犬の食歴に合った療法食を選びましょう。

3.除去食試験はどのくらい続ける?
皮膚症状を評価する除去食試験は、一般に4〜12週間程度行います。その中でも8週間前後が重要な目安で、多くの犬ではこの期間までに症状の変化がみられます。一方で、少数ではさらに長い期間が必要になることがあります。
「数日食べても変わらなかったから」と次々にフードを変更すると、何が症状に関係しているのか分からなくなります。どの症状を、どのくらいの期間評価するかを決めて経過を見ることが大切です。
なお、皮膚症状と消化器症状では経過の見方が同じとは限りません。後ほど紹介する嘔吐の事例では最終的な安定まで約4か月を要しましたが、これはすべての犬に当てはまる期間ではありません。
4.除去食試験を成功させるポイント
除去食試験中は、原則として決めた食事以外のものを与えません。おやつ、ジャーキー、デンタルガム、人の食べ物、他の犬や猫のフード、味のついた投薬補助食品なども評価に影響する可能性があります。
「一口だけなら」と与えてしまうと、せっかくの試験が判断しにくくなることがあります。ご家族全員でルールを共有することが大切です。
また、食事変更前から症状を記録しておきましょう。皮膚は写真、かゆみはPVAS、嘔吐は回数、下痢は便の状態や排便回数を記録すると、食事変更前後を比較しやすくなります。

5.症状が改善したら食物負荷試験
除去食で症状が改善しただけでは、「その食材が原因だった」と確定できません。診断を確認するうえで重要なのが食物負荷試験です。
症状が改善した後に以前の食事や疑わしい食材を再び与え、症状が再発するかを確認します。除去食で改善し、再負荷で再発するという経過が確認できると、食事との関連をより明確にできます。
ただし、症状や既往歴によっては安全面を考慮して実施しない場合もあります。自己判断ではなく、獣医師と相談しながら進めます。
リンパ球反応検査について:リンパ球反応検査は、それだけで食物アレルギーや原因食材を確定する検査ではありません。当院では、食歴や症状、除去食への反応などを総合的に評価する際の補助情報として利用しています。食物アレルギーの診断では、除去食試験とその後の食物負荷試験による確認が基本です。
6.当院の事例① 食事の変更後に慢性的な嘔吐が改善したトイプードル
5歳、トイプードル、去勢雄の事例です。

約3か月前から頻繁に嘔吐するようになり、当初は内服薬で治まっていましたが、次第に薬を飲んでいても嘔吐を繰り返すようになりました。
慢性的な嘔吐にはさまざまな原因があります。この事例では経過から食事の関与についても検討し、食歴や症状に加えてリンパ球反応検査も参考にしながら、小麦タンパクを利用したフードへ変更しました。
食事変更後もしばらく嘔吐は残りましたが、その後は徐々に頻度が減少し、約4か月後にはほとんどみられなくなりました。
この経過から食事の関与が考えられましたが、食物負荷試験によって原因食材を確定した事例ではありません。また、約4か月という期間はこの犬の経過であり、一般的な改善期間を示すものではありません。
慢性的な嘔吐には食事以外にも多くの原因があるため、「よく吐く=食物アレルギー」と決めつけず、必要に応じて他の消化器疾患や全身性疾患も検討します。
7.当院の事例② 食事の見直しで涙やけが改善したビションフリーゼ
2歳、ビションフリーゼ、去勢雄の事例です。

子犬の頃から涙やけが続き、目の周囲の赤みや薄毛もみられていました。
涙やけにはドライアイ、マイボーム腺機能不全、結膜炎、眼瞼や睫毛の異常など、さまざまな原因があります。この犬では眼の状態を評価するとともに、食事の関与についても検討しました。
食歴や症状、リンパ球反応検査などを総合して食事を選択し、食物アレルギーに配慮した療法食へ変更しました。点眼療法は変更せず継続しました。
その後、顔周囲の痒みと目からあふれる涙が徐々に減少し、数か月後には涙やけも大きく改善しました。
ただし、「涙やけ=食物アレルギー」ではありません。まず眼そのものに原因がないかを確認し、そのうえで皮膚症状や食事との関連を考えることが大切です。

関連記事|犬の涙やけが治らないのはなぜ?改善した3つの事例から原因と治療を獣医師が解説
8.食物アレルギーと分かったら、一生同じ療法食?
必ずしも、最初に使用した療法食を一生続けなければならないわけではありません。
長期的な食事管理では、「何を食べると症状が出るのか」「何なら問題なく食べられるのか」を整理することが大切です。食物負荷試験などで原因食材を絞り込めれば、その食材を避けながら長期的に続けられる食事を選べる場合があります。
一方、自己流で多くの食材を除外すると栄養バランスが偏る可能性があります。長期管理では、原因食材の回避と栄養バランスの両方を考えます。
9.補足|腸内環境と皮膚の関係 ― Gut-Skin Axis
近年、腸内環境と皮膚・免疫のつながりを考えるGut-Skin Axis(腸―皮膚相関)が研究されています。
一方で、犬のアトピー性皮膚炎に対するプロバイオティクスの臨床的な有効性については、現時点では十分に確立していません。シンバイオティクスなどの腸内環境へのアプローチは、食事管理や標準的な治療を置き換えるものではなく、必要に応じて補助的に考える位置づけです。
食物アレルギーが疑われる場合には、まず除去食試験と食物負荷試験によって食事との関係を評価することが基本です。
関連記事|犬のアトピー性皮膚炎に対する新しいケア:シンバイオティクスのご紹介
10.よくあるご質問
Q.「アレルギー用」と書かれたフードなら、どれでも大丈夫ですか?
いいえ。市販の低アレルゲンフードと、診断のための除去食試験に使用する療法食は同じとは限りません。加水分解の程度、原材料、これまでの食歴などを確認して選びます。
Q.除去食試験中に、おやつを少しだけ与えても大丈夫ですか?
原則として、決めた食事以外のものは避けます。少量のおやつ、デンタルガム、人の食べ物、味付きの投薬補助食品なども評価に影響する可能性があります。
Q.リンパ球反応検査で反応した食材は、すべて食べられませんか?
いいえ。検査結果だけで原因食材を確定することはできません。当院では食歴や症状などと合わせ、除去食を選択する際の補助情報として考えています。
Q.除去食に変えても、すぐに良くなりません。フードが合っていないのでしょうか?
すぐに改善しないからといって、必ずしもその食事が合っていないとは限りません。
皮膚症状では、一般に4〜12週間程度行います。その中でも8週間前後が重要な目安となります。今回の嘔吐事例では最終的な安定まで約4か月を要しましたが、これはすべての犬に当てはまる期間ではありません。自己判断で次々と変更せず、症状を記録しながら評価期間を相談しましょう。
Q.犬の食物アレルギーでは、どんな食材が原因になりやすいですか?
牛肉、乳製品、鶏肉、小麦などは、犬の食物アレルギーの原因として比較的多く報告されています。ただし、「鶏肉だからアレルギーになりやすい」という単純なものではありません。これまでその犬がどの食材を、どのくらい食べてきたかも重要です。原因食材を推測だけで除外するのではなく、食歴を確認したうえで除去食試験を行います。
Q.除去食試験中に薬を飲んでも大丈夫ですか?
必要な薬を自己判断で中止してはいけません。ただし、肉や乳製品などで味付けされた薬や投薬補助食品は、除去食試験の結果に影響する可能性があります。現在使用している薬やサプリメントがある場合は、除去食試験を始める前に獣医師へお知らせください。
11.まとめ|当院が食物アレルギーの診療で大切にしていること
食物アレルギーの診療で大切なのは、検査結果だけを見て「この食材が原因」と決めることではありません。
これまで何を食べてきたのか、どの症状がいつから続いているのか、食事を変えるとどう変化したのか。こうした情報を整理し、除去食試験と必要な食物負荷試験を組み合わせて評価します。
また、かゆみ、外耳炎、嘔吐、下痢、涙やけには食物アレルギー以外の原因もあります。当院では「食物アレルギーだけを見る」のではなく、その犬に起きている症状を総合的に評価することを大切にしています。
12.こんな場合は一度ご相談ください
「アレルギー用フードを何種類試しても改善しない」「かゆみや外耳炎を繰り返す」「嘔吐・下痢が続く」「涙やけと顔のかゆみが一緒にある」「検査結果をもらったが、何を食べさせればよいか分からない」といった場合は、これまでの食事内容や症状の記録をご持参のうえご相談ください。
食物アレルギーは、フードを何種類も試すほど診断が難しくなることがあります。今まで食べたフード・おやつ・ガムなどが分かる範囲で構いませんので、記録や商品の写真をご持参ください。東京ウエスト動物病院では、皮膚・耳・消化器症状に加え、涙やけなど眼周囲の症状も含めて総合的に評価します。
受診の際には、現在のフードだけでなく、これまで与えていたフード、おやつ、デンタルガム、投薬補助食品などが分かると、食事との関係を評価する手がかりになります。
前編|犬の食物アレルギーとは?涙やけ・外耳炎・かゆみとの関係、診断方法を解説

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