ペットの皮膚・耳の病気 – 1.もっとも多い膿皮症 – 皮膚に強い東京ウエスト動物病院|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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ペットの皮膚・耳の病気 – 1.もっとも多い膿皮症 – 皮膚に強い東京ウエスト動物病院

ここでは、シリーズで皮膚の病気について解説をしていきます。当院に来院された実際の皮膚疾患の事例を取り上げ、その流れについてご紹介致します。

当院では、『正しい問診』、『正しい診察』、『正しい検査』、『正しい診断』のもと、『正しい治療プラン』、『予後のフォロー』を実践しています。

皮膚や耳の病気は種類としては、以下の7種類ほどに大別されます(一部重なる部分もあります)。
1.膿皮症(感染性皮膚炎)
2.寄生虫性皮膚、耳疾患(マラセチア、アカラス、ノミ・ダニ、疥癬など)
3.炎症性皮膚疾患(犬猫のアトピー性皮膚炎、犬食物アレルギー性皮膚炎など) 猫 柴の子
4.免疫介在性皮膚疾患(天疱瘡・類天疱瘡、エリテマトーデス、多形紅斑、VKH症候群など)
5.栄養・内分泌障害性皮膚疾患(甲状腺、副腎、角化異常、肉芽腫性脂腺炎など)
6.腫瘍性皮膚、耳疾患(リンパ腫、腺癌など)
7.その他の皮膚疾患(体質、免疫由来の好酸球性肉芽腫、精神的な要因での心因性脱毛など)

これらの中で、もっとも多い皮膚系の疾患は膿皮症(のうひしょう)です。今回は、第1回目として膿皮症を取り上げています。

1.膿皮症(感染性皮膚炎)とは

典型的な犬の膿皮症
皮膚炎の真ん中に膿が溜まった白いエリアが見えます
[赤い発疹(丘疹)の中に白い膿を持った発疹(膿疱)]

膿皮症(のうひしょう)は、主に皮膚の常在菌であるブドウ球菌の感染による皮膚炎です。表面性、表在性、深在性の3タイプがあります。

1-1.球菌とは
下の写真の中に見られる小さな丸い形をした細菌です。病変部から採材し染めて顕微鏡で見るとこのようなものがたくさん見られます。

球菌とは画像の中に見える丸い菌です
ここではたくさんの球菌が出現しています

この病気は、皮膚におけるバリア機能と細菌の増殖機能のパワーバランスが崩れ、皮膚のバリアが破られることで起きます。

2.膿皮症の特徴とは
膿皮症は、犬で非常に多くみられます。その理由としては、
① 皮膚が薄い(ヒトの1/6の厚み)
② 皮膚のpHが細菌の増殖しやすい弱アルカリ性
などが挙げられています。

3.膿皮症になる原因とは
膿皮症は主に皮膚に常在しているブドウ球菌が異常に増殖することが原因です(前述の写真)。
皮膚にはふだんから細菌や真菌(カビ)が付着することはありますが、皮膚の抵抗力(バリア機能)があり、清潔であれば炎症を引き起こすことはまずありません。

3-1.発症の引き金になる要因とは
品種、年齢、アレルギーなどの他の皮膚病の存在、内分泌ホルモンの異常、腫瘍の存在、ステロイド剤や免疫抑制剤、抗がん剤などの薬剤の使用、高温多湿、不衛生な生活環境、栄養不良、間違ったスキンケア(シャンプー剤の誤選択、過剰なブラッシング)などがあります。体を舐めることで全身に広がり、表皮に感染するとも言われています。

3-2.皮膚のバリア機能とは
・被毛:光や熱の刺激から表皮を保護し、皮膚環境を一定に保ちます。
・表皮:ケラチンという蛋白質からなる「角質細胞」とその間を満たす「セラミド」(細胞間皮脂)で構成されています。これにより水分の保持(皮膚の乾燥防止)、細菌などの侵入を防いでいます。
・表皮の常在菌:他の細菌の侵入防御や増殖抑制
・免疫防御機構:表皮から侵入した細菌などからの防御

このように、角質層は皮膚を守るバリアの役目をしてくれています。もし何らかの理由でこのバリア機能が低下すると、皮膚は乾燥してカサカサになったり、外部からの刺激を受けやすい敏感肌になってしまい、痒みを引き起こしやすくなります。

犬、猫の身体の中で、皮膚組織は体重の15~20%とかなり大きな部分を占めます。皮膚は約3週間のサイクルで定期的に生まれ変わり、これを皮膚の「ターンオーバー」といいます(ちなみに人は約4週間です)。

3-3.皮膚バリア機能を低下させる要因とは
・抵抗力の弱い「若齢犬」「シニア犬」
・高温多湿、不潔な環境(密な被毛下の皮膚など)

・アレルギー性皮膚炎(アトピー、ノミアレルギー、食物アレルギーなど)
・外部寄生虫(ノミ、ヒゼンダニ、毛包虫など)

・すり傷やしわの谷間など物理的障害
・内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群など)

・自己免疫性疾患
・その他の全身性疾患(糖尿病、膵炎、栄養不良、消化器障害、腫瘍など)
・ステロイド剤の長期投与
など
このような要因については、対策、改善のほか治療を計ることが必要です。

4.膿皮症の診断とは
4-1.問診
飼主様からの経過確認、他の疾患の有無、治療歴の確認、効果の有無など、できるだけ多くの情報を得ることが大切です。

4-2.細胞診検査
細胞診検査は極めて重要です。皮膚病変部からスライドグラスを用いたスタンプ法、メス刃を用いたスクラッチ法、マイクロブラシ採取法などを用いて採材し、固定・染色後顕微鏡下にて、細菌、細胞、角化細胞、その他寄生虫などの有無、程度を観察、記録します。

皮膚病変部からの採材用マイクロブラシ(滅菌済み)

膿皮症での細胞診の1
原因菌としての小さな丸い形の球菌(矢印)
がたくさん見られます

4-3.類症鑑別
マラセチア性、アトピー性、食物アレルギー性、皮膚・耳寄生虫疾患、肥満細胞腫、上皮向性リンパ腫、身体因、精神因などがリストアップされます。

品種、年齢、性別、皮膚病の経過、発生部位、左右対称性、予防歴の有無、既治療に対する効果の有無などを参考に類症鑑別を進めます。

皮膚病変(地肌が見える)の左右対称性を示します
(両脇、おなか、両うしろ足)

皮膚病変(地肌が見える)の左右対称性を示します
(両まえ足)

地肌が見える皮膚病変の左右対称性を示します
(おしり、両うしろ足、両かかと)

5.膿皮症の症状とは
5-1.膿皮症(犬)の代表的な所見
・赤い発疹(丘疹)
・膿を持った発疹(膿疱)
・かゆみ
・脱毛
・発赤を中心に環状に皮膚がめくれる(表皮小環)
・色素沈着が起こり、皮膚が薄く黒ずむなど

皮膚の抵抗力が下がったときに発症し、丘疹(きゅうしん:赤い発疹)や膿疱(中心に膿を持つ発疹)が形成され、かゆみや脱毛を伴うこともあります。下腹部や内股・背側によく起こるので、症状がないかチェックすることが大切です。

膿皮症はかゆみを伴うので皮膚を引っかいて傷ができ、発赤(ほっせき)、湿疹、脱毛を起こします。

膿疱が拡大し破裂すると、発赤を囲んで環状に薄く皮がめくれた状態である表皮小環(ひょうひしょうかん)になることもあります。

表皮小環の段階を過ぎると、表皮小環のめくれた皮膚が剥がれ落ちた後、黒い粒が集まったような色素沈着ができます。この色素沈着は多くは数ヵ月間残りますが、少しずつ薄くなります。

5-2.膿皮症の種類
膿皮症には3種類のタイプがあります。発症の部位によって、表面性、表在性、深在性です。また、炎症疾患や内分泌疾患などに併発するといった特徴も知られています。
犬の皮膚炎で最もよくみられるのは真ん中の表在性膿皮症です。

表面性膿皮症、表在性膿皮症、深在性膿皮症を見極めていくことが大切です。
表面性膿皮症は皮膚表面での炎症、表在性膿皮症は表皮付近での炎症、深在性膿皮症はそれより下の真皮や皮下組織で起こる炎症です。

深在性になるほど炎症は強くなり、炎症部には結節と呼ばれる径1㎝以上の大きな隆起が見られることもあります。
さらに悪化すると真皮より下の皮下組織にまで炎症が広がり、激しい症状を伴う皮膚炎になることもあります。そのため、深在性膿皮症の治療は長期化することがあります。

6.膿皮症の治療法とは
治療スタートの考え方は、①皮膚の局所療法と②全身療法です。
実際には、
・洗浄
・外用薬
・抗生剤
・局所の保護
・全身療法の併用
・ エリザベスカラーを付ける
などの具体的な処置があり、病気の程度によって組み合わせを考えていきます。

膿皮症は細菌感染なので、原因菌(ブドウ球菌)に対して有効な抗生剤を最低でも2~3週間投与します。症状が良くなっても細菌が潜んでいることが考えられる場合は、少なくとも3週間、あるいはそれ以上続けることもあります。

治療を継続しても良化しない場合は、原因菌を特定し、どの抗生剤が最も効果があるかを確認するために、「細菌培養検査・薬剤感受性試験」を行い、その結果により薬剤を選択する場合もあります。他の疾患を併発している場合は、その治療も併せて行います。

7.膿皮症の予防方法とは
皮膚の抵抗力を保つ、バリアの機能を保つことは大切なことです。
その方法としては、
・良質なフードを選ぶ(動物病院で相談されるのも良いと思います)
・おやつや人の食事がメインにならないように気を付ける

・快適な湿度・温度の管理
・予防接種やノミダニ、フィラリアなどしっかり予防する

・定期的にブラッシング、シャンプーを行い、十分に洗い流し毛の根元までしっかり乾かす
・体調が悪い時は早めに受診する
など
このように、健康管理をしっかり行うことで膿皮症予防の成功率は高くなります。

8.膿皮症とのつき合い方
マイクロバブルバス&スキンケア
当院ではマイクロバブルバスによる皮膚・被毛のケアをお勧めしています。現在、ミラバスの併用も行っています。スキンケア(洗浄、清潔を保つ、皮膚環境を整えるなど)として側面からのサポートは非常に効果的です。現在多くの方々にご利用いただいております。

お家ではふだんからのブラッシング、ストレスの少ない生活(食べる、寝る、遊ぶ)、皮膚・被毛の観察は大切です。また、こまめな皮膚状態のチェックと共に、かゆがり症状、皮膚が赤い、地肌が見える、皮膚が湿っている、毛が抜けるなどの症状を観察して下さい。少しぐらいなら大丈夫だろうではなく、おやっ? と気づかれた際は動物病院を受診して下さい。

1年を通して、膿皮症が最も見られるのは高温多湿になる梅雨や夏の時期です。この期間は特に注意してあげて下さい。
Web問診はこちら – 東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661   FAX: 042-349-7662

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