トーキョーウエストブログ
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当院での手術による治療前後の事例を犬、猫において示しています。このチェリーアイ、正式には「第三眼瞼腺脱出(瞬膜腺脱出)」と言います。
このようにきちんと整復できています。手術に当たっては狭いエリアでの細かい、繊細なテクニックが求められます。特に、経過が長く、炎症や癒着がひどい場合は、腫瘍などとの鑑別も大切で、診断や手術テクニックにも工夫が必要です。当院では、長年の臨床経験と専用の器具器材を揃えた、極めて再発の少ない当院独自の対応[元の位置に戻すリーポズィション( Reposition)法]で臨んでいます。
2.チェリーアイCherry eye とは?
犬や猫の目頭に小さなサクランボのように見える「チェリーアイ」、生後3~12カ月齢の若い子に多く見られる病気です。
成年期や老齢期のペットにおいては、腫瘍性疾患などは検査をして除外する必要があります。
2-1.第三眼瞼(瞬膜)
動物の下瞼の内側には、人にはない3番目の瞼(まぶた)として「第三眼瞼(だいさんがんけん)=瞬膜(しゅんまく)」という組織があります。
瞬時に目を覆う(保護する)ことができる機能を持つ薄い粘膜組織です。中には、第三眼瞼の構造を支持する扁平なT字型ヒアリン軟骨、免疫活性のためのリンパ濾胞などのほか、奥の方には涙を分泌する腺組織があり、多数の導管を経由して涙液水層の30~50%を分泌し、涙腺の副腺として重要な働きをしています(このため、摘出してしまうとシビアなドライアイを引き起こしてしまいます)。T字型軟骨のベース部分は内眼角方向に広がり、第三眼瞼腺組織内に埋没しています。第三眼瞼腺(瞬膜腺)組織は眼球周囲組織線維束に付着し固定されています。
この部の付着が弱かったり、先天的に欠損したりしていると本症が発生しやすいと言われています。
この第三眼瞼(瞬膜)は通常、下瞼の裏側に引っ込んでいて見えませんが、必要な時には瞬間的に出てきて、角膜を保護したり、寝ている時や体調不良の際には、目の表面を覆うように出てきます。また、体調が悪い時のサインとしても診断時に利用されます。
この第三眼瞼(瞬膜)の裏側下側にある腺組織「第三眼瞼腺(瞬膜腺」が先天的あるいは後天的な要因で表側に飛び出してしまったものを、サクランボに例えて「チェリーアイ」と言います。
2-2.かかりやすい年齢や品種
先天的な原因の場合には、生後数ヶ月~1才未満の若い子で多くみられます。犬では、 小型犬を始め、中~大型犬にも見られます。
品種としてはブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ビーグル、アメリカン・コッカー・スパニエル、チワワ、トイプードル、セント・バーナード、ペキニーズ、ボストン・テリアなどに、また、猫でも見られます。
2-3.症状
ある日、目の内眼角の下側にポコンとピンク色から赤い色の小さな腫れ物に気づきます。チェリーアイの症状は、気にしない軽度なレベルから瞬きの回数やメヤニが増えたり、赤目、目をこするような仕草など重度なレベルまで様々です。少しづつ腫れて大きくなると元に戻りにくくなり、症状は赤目、目やに、粘膜出血など悪化することもあります。
通常は、瞬膜腺や瞬膜の粘膜が空気に触れて乾燥気味になり、赤く腫れあがり(結膜炎)、痛みを伴うことが多いです。
片側性であっても、もう片眼の方に発症することも多く見られます。多くは、数日から数ケ月後に脱出することが多いです。基本的には両眼性と考えていただいて良いと思います。
2-4.他の犬や人にうつる?
チェリーアイが伝染することはありません。ただし、感染症によってチェリーアイを発症している場合には、その感染症がうつり、うつされた子がチェリーアイを発症するといった可能性はあるかもしれませんが、そのような事例はほとんどないと思われます。
3.チェリーアイの原因は?
チェリーアイの原因は、遺伝による先天的なものと老齢や腫瘍、外傷、感染症などによる後天的なものが知られています。
3-1.先天的なもの
チェリーアイの多くは先天的な原因によって引き起こされます。第三眼瞼腺(瞬膜腺)を固定している結合組織が先天的にない(欠損)場合や、結合組織が弱い場合にその部分が切れて発症してくるとされています。
3-2.後天的なもの
老齢、目にできた腫瘍、外傷、感染症などが原因となって発症することも知られています。
4.チェリーアイの治療法は?
チェリーアイの治療には、内科的治療と外科的治療があります。
4-1.内科的治療
内科的治療法では、点眼薬や内服薬を投与し、飛び出した第三眼瞼腺の炎症を軽減させます。軽症な場合には、炎症が改善され、収まったり、チェリーアイの粘膜に触れないように瞼の上から手で押し込むことで一時的に改善できることもあります。でも、多くの場合は再発します。この場合は、下記の外科的治療をお勧めします。
4-2.外科的治療
当院では、第三眼瞼腺(瞬膜腺)脱出(チェリーアイ)を切除する方法は行いません。この腺は涙の約30~50%を分泌している重要な涙腺組織であるため、切除してしまった場合、目が乾き、後に深刻な乾性角結膜炎(ドライアイ)になってしまいます。そのため、切除せずに元の位置に戻し、温存させるようにします。
チェリーアイの視認
手術前の状態で逸脱したチェリーアイが見えています
術後の状態でチェリーアイは元の位置に矯正されています(リーポズィション 法)
また、体格が非常に小さな子での手術は、そのサイズに対応した専用の器材、拡大鏡などを用いた入念なテクニックが必要です。
当院では、本来の元の位置に戻す手術(Surgical method of reposition、リーポズィション 法)を長年行っています。成功率は高くほぼ100%、再発率はほぼ0%を達成しています。この方法は当院院長による独特な術式で、生理的に元の位置に戻すことを最優先に術式を考え、作り上げられてきた方法です。
4-3.治療にかかる費用
治療を受ける施設や症状の程度によって異なると思います。当院では、内科的治療の場合、初診料、検眼料、眼科検査、薬(目薬や飲み薬など)の処方、エリザベスカラーなどで3万円以上はかかります。
外科的治療が必要な場合には、麻酔や手術のための前検査(目と全身の評価、ウイルス検査など)、手術費用(難度によって変わります)、入院費用などで総額15万円前後かかります。ペットの大きさやチェリーアイの重症度、前検査の内容、手術時間、入院期間などによって差が出て、16万円を越える場合もあります。
なお、極めて小さい子の手術では、術野が小さく、特にマイクロサージェリーに準じた専用の器材、拡大鏡などを使う必要性があり、より難しい手術となります。
この手術は、豊富な臨床経験と細やかな手術テクニックについての技術修得が必要となります。
細やかな縫合のための持針器
拡大用ルーペ
5.チェリーアイの予防法は?
チェリーアイの原因は遺伝的なものであっても、後天的なものであっても予防することは難しいです。発症したら、内科的な対処では十分な治療効果を得ることは難しいことが多いです。根治的な治療としては手術がお勧めです。
5-1.当院での手術方法で再発する可能性は極めて低い
当院での手術では、ほぼ元の深い位置に固定する当院独特の術式を採用し、溶けない糸を使用することで再発のケースはほとんどありません。高い成功率を誇っています。外部の施設から紹介を受ける場合や手術がうまくいかずに紹介される事例にも対応しています。
瞼の上からチェリーアイの粘膜に触れないように手で押し込んで元の位置に戻したチェリーアイは、一時的には戻っても、再発する可能性は大きいです。根本的な治療としては、元の位置に整復する矯正手術がお勧めです。また、術後早期に反対の目も発症してくるケースもあります。
5-2.チェリーアイとの向き合い方
チェリーアイは、あらかじめの発症を知ることは難しいです。多くの場合、ペットを購入されて早い時期に発症することが多いので、購入先への相談も必要と思われます。チェリーアイらしい症状を見つけたら、経験の豊富な診療施設での診察を受けていただき、本当にチェリーアイかどうかの確認が必要です。似て非なる疾患もあります。
当院では、飼主様の考えを始め、症状の程度、片眼性であっても先々両眼性になるリスクなどをお伝えし、手術に向かうか否か、その子にとって最善の方向、ご納得いただける最高の対処法を提案致します。
なお、先天性の場合は繁殖には供しないようにした方がよいと思われます。
Web問診はこちら – 東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661 FAX: 042-349-7662
こちらの記事、眼科の手術系 もご参照下さい。
チェリーアイ矯正手術 Reposition法 – 東京ウエスト動物病院