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2025(R7)10月に 子宮蓄膿症 について紹介させていただきました。子宮蓄膿症においては、飼主様にとっても非常に大切な、重要な症状がありますので、ここでわかりやすく説明を加えさせていただきます。
子宮蓄膿症でよくみられる 多尿先行の多尿/多飲 PU/PD (ピーユー/ピーディー) Polyuria and polydipsia の症状は、犬の飼主様にとっても極めて重要な臨床所見です。
犬の子宮蓄膿症において見られる多飲/多尿 PU/PD Polyuria and polydipsia は非常に高頻度でみられる臨床症状です。主に以下の3種類の病態生理が関与します。
1.大腸菌Escherichia coli(エシェリキア・コリ)の感染は子宮蓄膿症の最も一般的な原因です。
この菌によって産生されるエンドトキシン(内毒素)は全身の血流を巡り、腎臓内の尿細管にある受容体(バソプレッシンとも呼ばれる抗利尿ホルモンADH Anti Duretic Hormone に反応する受容体)に障害を与えたり、その機能を低下させるといわれています。
その結果、腎臓で濃縮尿が作れない(尿濃縮障害、腎性尿崩症様症状) → 多尿Polyuria PU → 代償的に多飲PDとなります。
この多尿/多飲の症状は、卵巣子宮全摘出手術後、経過が良ければ術後数日~1週間ほどで落ち着き、症状の回復と共に尿の低比重の改善も見られてきます。
2.子宮内膜嚢胞性過形成(CEH Cystic Endometrial Hyperplasia)に伴うホルモン変化
子宮蓄膿症の背景には プロジェステロン優位な発情後期(黄体期)があります。プロジェステロンはナトリウム保持や体液量の増加を引き起こします。さらに、プロジェステロンは ADH抗利尿ホルモンの作用を阻害する方向にも働き、多尿PUを助長するとされています。
3.子宮の炎症・脱水・腎前性因子による二次的変化
発熱、嘔吐、食欲不振により 腎前性腎障害を併発することも増悪要因になります。副腎などの二次的ストレス反応も多飲PDを増悪させる可能性は考えられます。

子宮蓄膿症でよくみられる 多尿先行の多尿/多飲 PU/PD (ピーユー/ピーディー)
犬の子宮蓄膿症はできるだけ早期の手術が効果的です。エンドトキシン(内毒素)による腎障害は時として手遅れになる場合もあります。このような病態が進行していることを類推できる症状として多尿・多飲があります。このような所見が見られるケースでは、手術による治療を先行させた方がよいと思われます。是非覚えておいて下さい。

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