「目を摘出せずに痛みを和らげる選択肢 – 側方眼瞼縫合手術という治療法」Lateral tarsorrhaphy|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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「目を摘出せずに痛みを和らげる選択肢 – 側方眼瞼縫合手術という治療法」Lateral tarsorrhaphy

ットの目の病気に悩まれている飼主様は少なくありません。
特に重度の乾性角結膜炎(KCS)、慢性的な牛眼(眼球突出)、慢性緑内障などのケースでは、「もう点眼が追いつかない」「目がずっと痛そう」「でも摘出するのはかわいそう…」と葛藤される方が多くいらっしゃいます。

当院ではそうしたケースに対し、「側方眼瞼縫合術(そくほうがんけんほうごうじゅつ)」という方法をご提案することがあります。

1.ご提案する事例
● 慢性的に角膜が乾いて傷がついてしまうKCS(乾性角結膜炎)の重度例

● 牛眼や眼瞼裂開症候群で角膜露出が続き、点眼でも限界がある場合

点眼だけではコントロールしきれない、でも眼球摘出は避けたいという飼主様のために、眼球温存と疼痛管理の両立を目的とした選択肢です。

2.側方眼瞼縫合術とは?
この手術は、目を完全に閉じてしまうのではなく、外側だけを縫い合わせて目の露出面積を減らす方法です。

「眼瞼部分縫合術」とも呼ばれ、角膜が乾燥しにくくなるだけでなく、眼表面の保護にもなります。

特に視覚がすでにない目で、「汚れがたまりやすい」「乾燥して痛みがある」というケースでは、生活の質(QOL)向上に大きく貢献します。

点眼が時間的になかなかできない方やご高齢のため物理的に困難な飼主様にとっては負担軽減になります。

3.実際の症例紹介(猫・犬)
事例1:

6歳のミックス猫、2ヶ月齢、♀避妊、1.82kg
初診時、右目は高眼圧(57.7mmHg)、眼球腫大、角膜浮腫、左目はすでに眼球癆でした。
来院から11ヶ月の時点で右目の角膜穿孔があり、痛みは顕著に出ていました。メヤニや涙も多く出ていました。右目を摘出することにはとても抵抗感のある飼主様で、目を摘らない方法を強くご要望でした。


右目は眼球腫大、角膜穿孔、牛眼、慢性緑内障の状態、
左目は眼球癆(がんきゅうろう)の状態

この子の右目に対しては、瞬膜・球結膜フラップ手術と側方眼瞼縫合手術の組み合わせをご提案しました。手術のための前検査を終え、その翌日に手術を実施しました。

➸ 瞬膜-球結膜フラップ手術と側方眼瞼縫合手術の組み合わせを実施。

術後は目ヤニなどの分泌物は減り、経過は良好とのことでした。快適そうな様子が見られるようになりました。

手術から4ヶ月目の状態
右目は点眼の種類も回数も減らすことができました。

事例2:
シーズー、8歳、♀避妊、4.35kg
初診時、左目は眼球突出、腫大、ドライ感が強く、義眼手術を検討中とのことでした。眼を摘らずに済む手立てはないものかとの相談で来院されました。

神経学的眼科検査では、角膜反射、眼瞼反射は両目とも見られていました。威嚇瞬き反射、眩目反射は両目とも陰性、対光反射は両目とも角膜の色素沈着、新生血管の集積などが強くで判定はできませんでした。

眼圧は、左目は高眼圧(40.6mmHg) でした。シルマー試験は、右目:10mm/5″、左:5mm/5″(基準は8~13mm/5”)で左目の低下がより顕著でした。両目とも慢性経過を辿っており、特に左目は慢性の緑内障で牛眼と言える状況でした。

➸ この子の左目に対しては、側方眼瞼縫合手術をご提案しました。手術のための前検査を終え、初診から8日目に手術を実施しました。

手術した左目は
瞼で被われ小さく見えますが、
眼球そのものは大きいままです。
痛み感はなく、メニやなどの分泌物で

少し汚れはつきますが、
目を気にする様子はありません。

術後10日目には抜糸も終え、眼をこすらなくなり、目の周囲の炎症も改善しました。飼主様は「もっと早く相談すればよかった」とコメントを下さいました。

いずれのケースでも角膜の表面がカバーされ、少ない涙液量のままであっても目の表面に潤い感は出て、メヤニ、痛み感は激減し点眼薬の種類も回数も減らすことができました。これは飼主様にとっても負担がへるという大きなメリットにつながっています。

4.手術の流れと術後のケア
手術のための前検査は必須となります。クリア出来ればできるだけ早い時期に手術を行います。
入院は基本的には日帰り~1泊程度の短期となります。
縫合部位は数週間で落ち着き、抜糸の必要はありますが、それまで点眼は最小限で済むことが多いです。
術後も再発などのリスクは低く、予後は比較的安定しています。

眼を完全に閉じないため、万一視力が残っている場合でもわずかな視覚は保持できる可能性はあります。

5.飼い主様へ:摘出以外の選択肢として知ってほしい
「目を取るしかないのか」と思いつめてしまう飼主様に、選択肢の一つとしてこの手術を知っていただきたいと思っています。

見た目も自然に仕上がりますし、何よりペットが痛みから解放され、快適に過ごせることが最大のメリットです。

お困りの症状がある場合は、ぜひ一度ご相談ください。手術の適応があるかどうか、しっかり診察してご提案いたします。

やさしく、あたたかい、確かなペット医療を!!

東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661 FAX: 042-349-7662
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