犬の細菌性胆嚢炎と胆嚢摘出手術|東京ウエスト動物病院|東京都小平市学園東町の動物病院

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犬の細菌性胆嚢炎と胆嚢摘出手術

胆嚢とは

胆嚢(たんのう)は、肝臓で作られた胆汁を一時的に貯める袋状の臓器です。
食事をとると、その刺激で胆嚢が収縮し胆汁を十二指腸に送り、脂肪の消化吸収を助けます。

胆汁の流れは「肝臓 → 胆嚢 → 胆管 → 十二指腸」というルートでつながっており、この流れが滞ると、胆汁がうっ滞して炎症や感染などを起こすことがあります。

胆嚢の疾患には胆のう炎、胆泥症、胆嚢粘液嚢腫、胆石、胆嚢腫瘍などもあります。

細菌性胆嚢炎とは
胆嚢内に細菌が侵入して炎症を起こす病気です。
主な原因菌は大腸菌(E. coli)や腸球菌、クレブシエラ菌など、腸内細菌が多く見られます。

細菌は主に次のような経路で胆嚢に侵入します:

  • 血液を介して(血行性に感染)
  • 腸管から胆管を逆行して(上行性に感染)

炎症が進むと、胆汁が膿状になる「膿胆嚢」や、胆嚢破裂を起こす危険もあります。

実際の症例
今回ご紹介するのは、柴犬、11歳、オス、9.7Kgの子です。
ある日突然、元気がなくなり、食欲も低下してしまいました。発熱もみられ、飼い主様が心配して来院されました。

 

柴犬、11歳、オス、9.7Kgの子

各種検査の結果
血液検査では、肝酵素(ALT・ALP)や炎症マーカー(CRP)の上昇が見られました。
さらに超音波検査を行うと、下の画像のように、胆嚢は拡張し、内部の胆汁は濃く見える像が確認されました。

 

胆嚢穿刺(エコーガイド下での胆汁採取)を行い、採取した胆汁を培養検査に提出したところ、大腸菌(E. coli)が検出されました。このことから、大腸菌による細菌性胆嚢炎であることが明らかになりました。

治療:胆嚢摘出手術
痛み止めや抗生物質などによる治療を開始しましたが、胆嚢の拡張と炎症の強さから、破裂の危険性が高いと判断され、胆嚢摘出手術をご提案致しました。

手術では、胆嚢は膨らみ、内部にはやや濁った胆汁が充満していました。幸い、周囲の組織には炎症による癒着はあまり見られませんでした。手術に当たってはソノキュア(リンク)を用い慎重に剥離して胆嚢を摘出しています。

拡張した胆嚢を肝臓から剥離しているところ

ソノキュアではく離中

 

胆嚢の根元を結紮して摘出した部分

摘出した胆嚢

お腹にはドレーンを設置して腹腔内に溜まる漿液などを回収するように努めています。

腹水を回収するためのドレーンバッグを設置

手術後は、静脈点滴、抗生物質、鎮痛剤、肝臓保護剤などを併用しながら慎重に管理していきました。
翌日から少しずつ食欲が戻り、術後1週間ほどで退院することができました。

病理検査の結果
摘出した胆嚢を病理検査に提出したところ、「リンパ球形質細胞性胆嚢炎」という診断が得られました。
このタイプの胆嚢炎は、細菌感染だけでなく、慢性的な免疫反応や胆汁のうっ滞も関係していると考えられています。

現在の経過
手術後は元気・食欲ともにすっかり回復しています。胆嚢を摘出しても、胆汁は肝臓から直接腸に流れます。日常生活に大きな支障は出ていません。

飼い主様へのアドバイス
胆嚢炎は、初期には症状が分かりにくいことも多いですが、放置すると胆嚢破裂や急性腹膜炎など、命に関わる合併症を起こす危険があります。

次のようなサインが見られたら、早めの受診をおすすめ致します。

  • 食欲不振・嘔吐・元気の低下
  • 黄疸(白目や歯茎が黄色い)
  • 発熱
  • 腹痛

また、中高齢犬では定期的な血液検査や腹部超音波検査を受けていただくことで、胆嚢や肝臓の異常を早期に発見することができます。

当院のGood Life 健康診断でも血液検査や腹部超音波検査を行うプランがございますので、是非ご活用ください。

追記:ソノキュアを用いた胆嚢摘出手術のビデオ(3分50秒)


胆嚢を切除しても生活に問題はないとされています。
もちろん術後は、胆汁を貯蔵するという胆嚢の働きは失われます。肝臓で作られる胆汁の総量は大きくは変化しないとされていて、十二指腸に流れ出る胆汁の1回量は減ることは考えられますが、その分胆汁を排出する回数は増えると言われています。胆汁は脂質やビタミンAなどの脂溶性ビタミンの消化吸収を助ける働きがありますが、この消化吸収に大きな影響はないということが分かっています。

排便には個体差はありますが、1~2ヶ月の間は、排便回数が増えたり、軟便や下痢が見られることはあるとされています。胆汁排出の回数が増えることで便に含まれる水分量が増えることが要因と考えられています。このような症状は一時的なもので、だんだんと排便の状況は改善されると言われています。また、軟便や下痢になったからといってうまく消化吸収ができていないわけではありませんので栄養面での心配も特にはいりません。

消化吸収への影響は少なく、特別な食事制限の必要もない、通常のフード、通常の運動など、特に日常生活に制限をかけることは必要ないと考えられます。

術後に発熱や強い腹痛などの症状が見られる場合には手術後の偶発症(合併症など)の可能性は考えられます。手術を受けた施設に問い合わせるようにして下さい。

やさしく、あたたかい、確かなペット医療を!!

Web問診はこちら – 東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661   FAX: 042-349-7662
胆嚢疾患  に強いー東京ウエスト動物病院

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