トーキョーウエストブログ
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小平市と周辺地域の皆さま、こんにちは! 東京ウエスト動物病院、循環器科担当の動物循環器認定医、宇佐美綾子です。
今回は猫の心筋症について詳しく解説していきます。心筋症は主に肥大型、拡張型、拘束型が知られています。猫にとって非常に重要な疾患であり、早期発見と適切な治療、ケアが必要です。以下では、心筋症の検診、原因、症状、診断の流れ、治療の流れ、予防法そして本症とのつきあい方についてお話し致します。
1.猫の心筋症の検診外来
当院では、1歳からの猫の心臓健診のお勧め として若い猫のための心臓検診外来を行っています。
2. 原因
猫の心筋症にはいくつかの要因があります。主なものを以下に挙げます。
① 遺伝的要因: 猫の心筋症の中で、診察で多く遭遇するのは肥大型心筋症です。メインクーンやラグドールなどの特定の品種には、遺伝的に肥大型心筋症を発症しやすい傾向が知られています。そのほかアメリカンショートヘア、スコティッシュ・フォールドでも多いとされています。近年では、マンチカン、ミヌエットなども遺伝子変異が発見されていて、実際の診療では日本猫においても遭遇します。
メインクーン
ラグドール
② 栄養不足: タウリンというアミノ酸が不足すると、拡張型心筋症を引き起こすことがあります。タウリンは猫にとって必須の栄養素です。なお、肥大型/拘束型の心筋症ではタウリンとの関連は知られていません。
以下3点の場合は、心筋症という診断にはなりませんが、心筋症と類似した心臓の形態になり、増悪の要因になり得ます。
③ 高血圧: 高血圧は心臓に負担をかけ、心筋症様の病態を引き起こします。
④ 甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンの過剰生成により心筋収縮力を増加させ、血圧や心拍数を上昇させます。
⑤ そのほか、ウイルスや細菌による感染症や炎症などの要因が心筋に影響を及ぼすこともあります。また、脱水、末端肥大症、腫瘍の浸潤なども心筋肥大を起こすため除外が必要になります。
3. 症状
猫の心筋症の症状は多岐にわたります。病態が進行するまで症状が見られない場合も少なくありません。
猫の心筋症では、無兆候期があることが問題になっています。そのため気づきに遅れることがあります。猫が高い所から落ちることがまれにありますが、健康な猫ではそのようなことは先ずありません。落ちることは、おそらく不整脈が要因と思われますが、すでに心筋症が進行した状態と考えられます。猫が落ちた場合は、たまたま落ちたと考えずに、すぐに病院で超音波エコー検査を中心とした心臓検診を受けていただく方がいいと思われます。数日~10日間ほどは注意して観察していただくよう飼主様にお伝えしています。
特に、以下のような症状に注意しましょう。
呼吸困難: 突然、普段より呼吸が速くなったり、とても苦しそうに呼吸をすることがあります。下の動画をご参照下さい。
(かなり苦しそうな様子が映ります)
元気消失: 活動量が減り、遊ぶことを嫌がる。
食欲不振: 食事を取らなくなる。
嘔吐や下痢: 消化器系に影響を及ぼすことがある。
心音の異常: 獣医師による聴診で心音に異常(心雑音やリズム異常など)が聴取されることがある。
血栓症: 進行増悪した心筋症では、血栓症を引き起こすことがあり、突然、後肢や前肢が動かなくなります。悪化した場合は命にかかわる事があります。多くは不整脈によって引き起こされ、呼吸が苦しくなる、意識障害、突然死などにつながることが知られています。
4.診断
心筋症の診断は、以下のステップで行われます。
① 問診: 飼主様からの症状や病歴の聴取を行います。
② 身体検査: 獣医師による全身身体検査を行います。
③ 心臓エコー図検査: 心臓の状態を詳しく調べるための心臓エコー図検査を行います。当院では、小さなサイズの心臓で、200回/分と心拍数が多い猫の心臓の検査に特化した超音波エコー検査装置(GE Vivid S60 N)を導入して対応しています。
GE Vivid S60 N
④ 血圧検査: 高血圧や低血圧の有無を検査します。
⑤ 血液検査: 体全体を調べる血液検査項目のほか、心臓バイオマーカー、腎臓、電解質、甲状腺ホルモンなどの測定を行うこともあります。
⑥ X線検査: 心臓の大きさや肺の状態を確認します。
これらの検査を通じて、心筋症の有無やその重症度を判断します。
5.治療
心筋症の治療は、症状や原因に応じて異なります。一般的な治療法は以下の通りです。
① 薬物療法: 利尿剤やβ遮断薬、ACE阻害薬などが使用され、心臓の負担を軽減します。
② 栄養管理: フードの見直しを行い栄養状態の改善に努めます。
③ 定期的なフォローアップ: 症状の変化や心臓の形態、血流などを観察し、必要に応じて治療を調整します。重篤な場合は、入院治療が必要となることもあります。
6.予防
心筋症は完全に予防することは難しいですが、以下の方法でリスクを減少させることができます。
① 定期的な健康診断: 年に1回の健康診断や心臓のための健診を受けていただくことで、早期発見が可能です。
② 食事: バランスのとれた高品質なキャットフードを選びましょう。
③ ストレス管理: ストレスが心疾患を引き起こすわけではありませんが、できるだけストレスは少ない飼育環境の方がよいと思われます。
7.つきあい方
心筋症と診断された場合は、症状の変化を観察します。
・呼吸をチェックしよう!
猫は犬よりも呼吸が速くなっていることに、気がつきにくい(わかりにくい)ために注意が必要です。1分間に40回を超える呼吸数であれば異常とされています。ふだんから呼吸数をみていく事でいつもより速い状態を見つけられるようにしましょう。
8.さいごに
猫の心筋症は早期発見と適切な治療によってうまくつき合っていくことが大事な病気です。飼主様には、愛猫の健康を守るために日々の生活の中でよく様子を見ていただき、定期的な心臓検診や健康診断を受けることをお勧め致します。何か気になる所見や事柄があれば、東京ウエスト動物病院にご相談下さい。大切な伴侶である猫さん達の健康を全力でサポート致します。
やさしく、あたたかい、確かなペット医療を!!
東京ウエスト動物病院 TEL:042-349-7661 FAX: 042-349-7662
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